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帰省

漢那浪笛




若夏わかなつの入江の西に、

萎ゆる帆を静かにたゝみ、

大船の錨なぐるや、


波止場には、吾かなつかしき

南国の男女だんによのあまた、

すゝみよる、はしけむかへぬ。


はしけより人力車くるまにうつり、

石原を、左右にゆれて、

店先の軒をたどれば、

かけつるす芭蕉実バナナのかをり

夏風にゆる/\薫じて、

故郷ふるさとは夢にさながら。


父母ちゝはゝや妹をしのび、

過ぎゆけば、榕樹しげれる、

門に着き||涙こぼれぬ。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「沖縄毎日新聞」

   1909(明治42)年4月26日

入力:坂本真一

校正:良本典代

2016年12月9日作成

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