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漢那浪笛




記念のための瀬戸焼の盃、

淋しい日の慰めに、とり出して、

泡盛をつぐ。


うつはの色も影も変らない、

酒の味ひも、

あゝ思出多き記念の盃。


底に沈んだ私のふけた顔、

ひよつとのぞくと、

思はず手掌がふるへた。


記念のための瀬戸際の盃、

私は君を手にして、

喜びと悲しみの二つ味ふ。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「沖縄毎日新聞」

   1911(明治44)年1月10日

※初出時の署名は「浪笛生」です。

※初出の新聞で作品名として扱われている「盃」を表題としました。

※表題は、底本では「南の友へ【三】」の見出しのもと、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年1月12日作成

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