戻る

老犬の怪

田中貢太郎




 漢の時、東華郡とうかぐん陳司空ちんしくうが死んで葬っておくと、一年ばかりして不意に家へ帰ってきた。そして、家内の者に地獄の話をして聞かしたり、酒を飲んだり、肉をったりして平生とすこしも変らなかった。ただ従来の陳司空と違っているところは、女をまどわすことであった。そのうえ、彼はよくあっちこっちと出歩いた。ある時外から帰ってきて、酒を飲んで寝た時に、家内の者が傍へ往って見ると、人間でなくて村の酒屋の老犬であった。






底本:「中国の怪談(一)」河出文庫、河出書房新社


   1987(昭和62)年5月6日初版発行

底本の親本:「支那怪談全集」桃源社

   1970(昭和45)年発行

入力:Hiroshi_O

校正:noriko saito

2004年11月3日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。





●表記について