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最後の丘

漢那浪笛




なつかしい丘の上、

棕呂の若葉のそよぎに、小鳥の唄。


傾むきつくす夕月も、

見る/\最後の接吻キツスを残して、

深い々々、海のかなたへ

去らうとする、


なつかしい丘の上に、Kの君を持つ心よ!

夢を語るやうな春の風に

顫へる。


葉ずれの音にが狂へば、

西へ東に、足が動きだす··················

夫れと思ふ俤が、更ににとまらぬ。


胸を抱いて、若かい悲しみに沈む。

林の間に、夜の色が浮び出した。||


黒ろいおそろしい影は

私の魂を厭し始める。


もう是れが私のKの君に対する最後だ!






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「沖縄毎日新聞」

   1911(明治44)年1月11日

※初出時の署名は「浪笛生」です。

※初出の新聞で作品名として扱われている「最後の丘」を表題としました。

※表題は、底本では「南の友へ【四】」の見出しの次の行に、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年1月12日作成

青空文庫作成ファイル:

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