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おびえ
漢那浪笛
咲きし
華
(
はな
)
はしぼみて、
わが世は
暗
(
くら
)
がりわたり。
くろめる渦巻きのなか
淋しき、うめきをやする。
そは、
冷
(
つめ
)
たき砂のうへに裂けて、
風に泣く片葉
□
(
(不明)
)
貝にも似たり。
絶えせぬ浪の響き、肉にゆさぶれば、
小さき魂は、音なく伏してあるなり。
「なほ生きてあるのみ」
いつかまた、われは哀ふ。
と思へば、あたりのものみな、
怖ろしく眼にとまる。
かつて、命をすてゝ去る人あるを聞けど
あまりにかへる日の遠し
···
···
···
···
。
われは今、かの
ひからびし
落葉の如く
地の上を、あてなく転げて、
冷やかに尚ほ生きてあるのみ。
底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩
」国書刊行会
1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「沖縄毎日新聞」
1911(明治44)年6月1日
※初出時の署名は「浪笛生」です。
※初出の新聞で作品名として扱われている「おびえ」を表題としました。
※表題は、底本では「南の友へ【一】」の見出しの次の行に、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年3月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、
青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)
で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
●表記について
このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。
●図書カード