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あやしき楽の音

漢那浪笛




かつて、きゝし折りなき楽の音!

今宵、心にしのび入る。


いとはわななき震ひ、

果ては||蒼き涙にむせぶ。


眼に見ゑず、心にとまるメロディよ!

知らず、深き迷ひにいらしむ。


吾れはなつかしきひとの声とや聞き、

底なき闇の中、メロディの消ゆる処へ

しづまむ。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「沖縄毎日新聞」

   1911(明治44)年6月2日

※初出時の署名は「浪笛生」です。

※初出の新聞で作品名として扱われている「あやしき楽の音」を表題としました。

※表題は、底本では「南の友へ【二】」の見出しの次の行に、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年1月20日作成

青空文庫作成ファイル:

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