戻る

暮れ方の窓

漢那浪笛




常に夢見るひとのすがた!

夕暮れ方、

しめやかな窓にしのんで来る。


なつかしい想ひは浪のやう············


みつむれば、おぼろにかすみ、

ちかよれば、闇のなかにとろけて、

果ては見えなくなる。


物 消えしあと 悲しいことよ!


どこかにすゝり泣きが消えた。

夫れは、びんのほつれにからんだ、

青い火のこのやうだ


つひ、私は二つ 眼を掩ひ、

闇の窓にうつ伏した。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「沖縄毎日新聞」

   1911(明治44)年6月12日

※初出時の署名は「浪笛生」です。

※初出の新聞で作品名として扱われている「暮れ方の窓」を表題としました。

※表題は、底本では「南の友へ【三】」の見出しのもと、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年4月3日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。





●表記について



●図書カード