長え長え昔噺 、知らへがな。
山の中に橡 の木いっぽんあったずおん。
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて啼 けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
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山の中に
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
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ひとかたまりの
||雀、雀、雀こ、
ほかの
||どの雀、欲うし?
て歌ったとせえ。
そこでもってし、雀こ欲うして歌った方図のわらわ、打ち寄り、もめたずおん。
||誰をし貰ればええべがな?
||はにやすのヒサこと貰れば、どうだべ?
||鼻たれて、きたなきも。
||タキだば、ええねし。
||女くされ、おかしじゃよ。
||タキは、ええべせえ。
||そうだべがな。
そうした案配こ、とうとうタキこと貰るようにきまったずおん。
||
て、歌ったもんだずおん。
タキの方図では、心根っこわるくかかったとせえ。
||羽こ、ねえはで呉れらえね。
||羽こ呉れるはで飛んで来い。
こちで歌ったどもし、向うの方図で調子ばあわれに、また歌ったずおん。
||杉の木、火事で行かえない。
したどもし、こちの方図では、やたら欲しくて歌ったとせえ。
||その火事よけて飛んで来い。
向うの方図では、雀こ一羽はなしてよこしたずおん。タキは雀こ、ふたかたの腕こと翼みんたに拡げ、ぱお、ぱお、ぱお、て羽ばたきの音をし口でしゃべりしゃべりて、野火の焔よけて飛んで来たとせえ。
これ、おらの国の、わらわの遊びごとだおん。こうして一羽一羽と雀こ貰るんだどもし、おしめに一羽のこれば、その雀こ、こんど歌わねばなんねのだおん。
||雀、雀、雀こ欲うし。
とっくと分別しねでもわかることだどもし、これや、うたて遊びごとだまさね。一ばん先に欲しがられた雀こ、
いつでもタキは、一ばん先に欲しがられるのだずおん。いつでもマロサマは、おしめにのこされるのだずおん。
タキ、よろずよやの一人あねこで、うって勢よく育ったのだずおん。誰にかても負けたことねんだとせえ。冬、どした恐ろしない雪の日でも、くるめんば
さきほどよりし、マロサマ、着物ばはだけて、歌っていたずおん。
||雀、雀、雀こ欲うし。雀、雀、雀こ欲うし。
||どの雀、欲うし?
||なかの雀こ欲うし。
タキこと欲しがるのだずおん。なかの雀このタキ、野火の黄色え黄色え焔ごしに、悪だまなくこでマロサマば
マロサマ、おっとらとした声こで、また歌ったずおん。
||なかの雀こ欲うし。
タキは、わらわさ、なにやらし、こちょこちょと言うつけたずおん。わらわ、それ聞き、にくらにくらて笑い笑い、歌ったのだずおん。
||羽こ、ねえはで呉れらえね。
||羽こ呉れるはで飛んで来い。
||杉の木、火事で行かえない。
||その火事よけて飛んで来い。
マロサマは、タキのぱおぱおて飛んで来るのば、とっけらとして待づていたずおん。したどもし、向うの方図で、ゆったらと歌るのだずおん。
||川こ大水で、行かえない。
マロサマ、首こかしげて、分別したずおん。なんて歌ったらええべがな、て打って分別して分別して、
||橋こ架けて飛んで来い。
タキは
||橋こ流えて行かえない。
マロサマは、また首こかしげて分別したのだずおん。なかなか分別は出て来ねずおん。そのうちにし、声たてて泣いたのだずおん。泣き泣きしゃべったとせえ。
||あみださまや。
わらわ、みんなみんな、笑ったずおん。
||ぼんずの念仏、雨、降った。
||もくらもっけの泣けべっちょ。
||西くもて、雨ふった。雨ふって、雪とけた。
そのときにし、よろずよやのタキは、きずきずと叫びあげたとせえ。
||マロサマの
そうしてし、雪だまにぎて、マロサマさぶつけたずおん。雪だま、マロサマの右りの肩さ当り、ぱららて白く砕けたずおん。マロサマ、どってんして、泣くのばやめてし、雪こ溶けかけた黄はだの色のふろ野ば、どんどん逃げていったとせえ。
そろそろと晩げになったずおん。野はら、暗くなり、寒くなったずおん。わらわ、めいめいの家さかえり、めいめい
長え長え昔噺 、知らへがな。
山の中に橡の木いっぽんあったずおん。
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
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山の中に橡の木いっぽんあったずおん。
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
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