桜 さつぱりした雨上りです。
尤も花の
萼は赤いなりについてゐますが。
椎 わたしもそろそろ芽をほごしませう。このちよいと鼠がかつた芽をね。
竹 わたしは未だに
黄疸ですよ。
············ 芭蕉 おつと、この緑のランプの
火屋を風に吹き折られる所だつた。
梅 何だか寒気がすると思つたら、もう毛虫がたかつてゐるんだよ。
八つ手
痒いなあ、この茶色の
産毛のあるうちは。
百日紅 何、まだ早うござんさあね。わたしなどは御覧の通り枯枝ばかりさ。
霧島
躑躅 常
||常談云つちやいけない。わたしなどはあんまり忙しいもんだから、今年だけはつい何時にもない薄紫に咲いてしまつた。
覇王樹 どうでも勝手にするが好いや。おれの知つたことぢやなし。
石榴 ちよいと枝一面に蚤のたかつたやうでせう。
苔 起きないこと?
石 うんもう少し。
楓 「若楓茶色になるも一盛り」
||ほんたうにひと盛りですね。もう今は世間並みに唯水々しい
鶸色です。おや、障子に灯がともりました。