一
給仕人は電気
今春米国モンタナの工科大学で卒業生のために祝宴を開いた時、ボーイの代りに電気を使って御馳走した。一列に並べた食卓の真中に二条のレールを据え付け、この上を御馳走を満載した可愛らしい電車が
磁石に感ぜぬ鉄の合金
一に一を加えて二になるのは当り前だが、白い物と白い物を合せれば必ずしも白くなると限らぬ。合金などの性質も一般にその組成金属の性質から推して知られぬ妙な事がある。例えば普通金属中で最も磁石に感じやすいものは鉄とニッケルだが、不思議な事には鉄を七十七、ニッケルを二十三の割合に交ぜて作った合金は常温ではほとんど磁石に感じない。ハイカラ同志が結婚して急に世帯染みたという訳でもあるまいが、とにかくこの不思議な合金を航海の方に応用する事になった。一体近来の汽船には鉄を多量に使用するため、ややもすれば船体の鉄材が船の生命||羅針盤の磁石に感じて多少の誤差を起させる。さればと云って鉄の代りに他の金属を用いては高くなる。これには前述の二十三プロセントニッケル鋼を羅針盤の近傍必要の箇所に使ったらよいというので、目下ブレメンで新造中の船にはこれを採用するはずになっている。
(明治四十年九月三日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二
罪人を発見する器械
近頃サイコメーターすなわち測心器とでも名づくべき器械を作った人がある。その人の説によると、人体に適度な弱い電流を通し、これを鋭敏な電流計に接続しておくと、その人の心の状態によって電流の強さが変り電流計に感じる。非常に驚いたり、また恐れたり、著しい心の劇動があると、そのために筋肉や血行に急変を起し、即座に電流が変るから電流計の鏡が著しく動く。この事を利用して重罪嫌疑者の審問に使おうというのがいわゆる測心器の目的であるそうな。先ず嫌疑者の両の手に器械の電極をシッカリ握らせておいて、色々の問を掛ける、そのうちにギックリ胸にこたえる事があると器械の鏡から反射する光線がピクリと動く。いくら平気を粧うて胡麻化そうとしても駄目だという事である。この器械がいよいよ成効するかどうかは未だ判らぬが、とにかく面白い発明である。も少し早くこの器械が出来ていてそして
電気療法のさまざま
強い電光で皮膚病、殊に
(明治四十年九月四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三
火災と電気
灯用としての
航海と無線電信
遠洋航海の途中で船の位地を知るために、正確な時計を要するは誰も知る通り。しかるに長い航海の間にはどんな良い
肉類の中の結核
獣肉中に結核の有無を見るには従来ただこれを切開して吟味するより外に手段はなかったが、近頃ある人がX光線で透して見てすぐに病所の有無を知る事を発見した。
カナリヤの雛
近頃英国で、ある学者が二軒の小鳥屋についてカナリヤが生む
指頭の渦紋
人間の指の渦紋の形は生れ落ちてから死ぬるまで変らないもの故、人間の見覚えをするには最もよい目印しである。それで現に罪人などの指形を紙に写しておいて再犯の時の参考にする事がある。これならば額のほくろや
(明治四十年九月七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四
脳髄の重さ
仏国の某学者が、種々の動物について、その全体量と脳髄の重量との比例を調べてみた。その結果によれば、比較的重い脳をもっているものは人間の外に手長猿、
野獣の写真
動物園で色々の野獣の形状だけは見る事が出来ても、その天然の
談話に費やす労力
人間が談話をしたり、歌ったり、演説したりする時には、肺の中の空気を若干の圧力で押し出しているが、このために要する器械的の仕事はどれだけであるか、平たく云えば一時間しゃべるにはどれだけの労力をするかという事を測定した人がある。この結果に拠れば、広い室で演説する場合ならば、一時間につき一四四ないし二八八キログラムメートルの仕事をする。もう少し分りやすく換算すれば、一秒ごとに三十五匁ないし七十匁くらいのものを一尺くらい持ち上げるのとほとんど同じくらいである。普通の対話ならばこの五分の一くらいなものだという。但し演壇をあちこち歩き廻ったり、
(明治四十年九月十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五
土を食う人間
各種の土や灰を食う人間はあまり珍しくない。我邦でも昔から壁土や
航海の未来
近頃英国の製鉄所で所長のサー・ヒュー・ベル氏が愉快な未来記めいた演説をやった。すなわち遠からざる将来において、船には蒸気機関のような重い場ふさげなものは
(明治四十年九月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六
結核の初期診断法
一時有名であったコッホのツベルクリンは、その後ただ結核病の診断にのみ用いられていた。すなわち結核の疑いある患者にこれを注射すると、もしそうであれば発熱などの反応を起すからわかるというのであった。しかるに今度仏国のカルメットという人の発表した所に拠ると、
(明治四十年九月二十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七
アフリカの
アフリカに、杜鵑の一種で俗名を「蜂蜜の案内者」と称する鳥が居る。蜜蜂の巣の所在を人に知らせるからこういう名が付いているのだそうな。しかるに近頃ある動物学者が調べた処によれば、この鳥は普通の杜鵑のように、他の鳥の巣へ自分の卵を産んで孵化させるのみならず、一層性の悪い事をする。すなわち巣の中にある他鳥の卵、云わば我子の乳兄弟を
家の貧富と子供の体格
近頃スコットランドの文部省でグラスゴー府の小学児童の体格検査をした結果を発表した。この報告によれば親が貧しくてただ一室だけに住まっているものは、体量も身長も最劣等であるが、二室持っている者の子はこれよりは少し良く、三室、四室と増すに従ってだんだん良くなる。例えば男児だけについて見ても、二室のものの子は四室の者の子に比べて平均十一ボンド七分軽く、四・七インチ丈が低い。女の児の方はこれよりも一層この差が大きいようである。つまり貧家の子供は自然に栄養その他の欠乏から体格が悪くなるのだろう。
(明治四十年九月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八
煙の中で呼吸する器械
仏国のチソーという人が、煙や硫気その他の
(明治四十年九月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]九
心臓の鼓動
(明治四十年九月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十
新奇な
これは
(明治四十年十月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十一
磁力起重機
強い電磁石を使って重い鉄片などを吸い付けて吊し上げ、汽車や汽船の荷上げや荷積みをする器械が近来
米国の電話
北米合衆国の電話に関する最近の統計を見ると、国柄だけに盛んな勢いを示している。千九百〇三年におけると三年後の千九百〇六年すなわち昨年の暮におけると、電話機の数も電線の延長もザット倍になっている。すなわち個数の三百八十万弱が七百十万余になり、電線の三百万マイル足らずが六百万余になっている。加入者の数は全人口に割り当てると二十八人に一人となる。一日中の通話の回数が驚くなかれ千六百九十四万とある。
(明治四十年十月二日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十二
風の力の大きい事は云うまでもない。この力を原動力に利用して各種の作業をすれば利益があるだろうという事はよく人の考える事だが、ただ一つ困る事は、風は至って気まぐれ者で、思う時に思うように吹いてくれぬので、始終きまった馬力を要する器械にはちょっと使いにくい。しかしこれには蓄電池という都合のよいものがあって、風の力を電気の力に変じて蓄え、必要に応じて勝手に使う事が出来るのである。現に英国バーミンガムでは十一年前から風車で電灯を点じている人がある。その風車は直径三十五フィートでこれを五十フィートの櫓の上に据え付け、十六燭の電灯二百個を点ずる外に、なお五馬力のモートル三個を運転しているが、未だかつて停電などを起さぬという事である。石炭や水力を得難い土地では風車を用いた方が石油機関よりは利益だという。
(明治四十年十月三日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十三
霧中の汽車信号
鉄道線路の傍に巨人のごとく直立しあるいは片手あるいは両手を拡げて線路の安否を知らせる普通の信号標は、通常の天気ならば昼夜の別なく有効であるが、ただ霧が掛かって数歩の外は見え分かぬような日には何の役にも立たぬ。この不便と危険を防ぐため、近頃米国大西鉄道で採用する発音信号機というのは簡単な仕掛けであるが数ケ月間の試験によって有効な事が確かめられた。危険の時には汽笛、安全の場合には鐘を鳴らす事になっている。
(明治四十年十月四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十四
大樽に一杯の馬鈴薯の皮をわずかに数分間で綺麗に剥いてしまうという器械が近頃米国で発明された。器械の桶の中に馬鈴薯を詰め込んで半馬力のモートルを運転させると、見る間に外皮は剥け落ち清浄に洗われて直ちに料理の出来るようになる。米国の海軍ではこの器械を四十台使っているが、水夫二、三人掛りで十五分間も運転させると一日の食糧くらいは楽に出来るという事である。馬鈴薯のみならず
(明治四十年十月八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十五
奇妙な病気
始終X光線を使っている人は往々不思議な恐ろしい病気に
(明治四十年十月九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十六
脳髄の保存法
解剖学や人類学の参考品として脳を保存する方法を詳しく研究した学者の説に従えば、普通大の脳を漬けておく液にはフォルマリンを三、蒸餾水を四五ないし二五、
(明治四十年十月十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十七
船内の消毒
船中で鼠を
(明治四十年十月十三日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十八
優しい返答
シカゴ市のある青年紳士が一日電話をかけようとしたが、どういう都合であったか接続が大変手間が取れるので紳士は
長さ一マイルの手紙
米国のある水兵が電信用の
(明治四十年十月十四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]十九
植物の生長
ロンドンの王立植物園で植物の生長に有効あるいは必要な諸種の条件について調査した結果の報告書によれば、第一に強烈な
(明治四十年十月十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十
ボートレースに無線電話
今年の七月、北米の大湖エリーの水上で
(明治四十年十月十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十一
日本の舞い鼠
子供の楽しみに飼うはつか鼠にちょっと歩いてはクルクルまわりまた歩いては舞ういわゆる舞い鼠というのがある。あの舞うのは何故かと調べてみると、内耳の一部をなしている三半規管の構造が不完全なため、始終に
(明治四十年十月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十二
近頃
(明治四十年十月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十三
(一)章魚の生殖作用
今年の
俗に章魚船と名づけられ、水面に浮んで風のまにまに帆かけて走る章魚の一種がある。その雌の体内で
(明治四十年十月二十日『東京朝日新聞』)
(二)光を放つ烏賊
次に面白いのは海底で光を放つ烏賊の話である。一体頭足類の動物中で多少の光を放つものが三十種以上もある。中にも非常に深海底から発見されたソーマトランパスと名づけるもののごときは、その光彩の美実に宝石をはめたようだという。例えば眼の辺には紺青色と真珠色の光を放ち、腹部にはルビー色、雪白色および空色の光斑を具えている。こういう怪物が真暗な深海の底を照らして游泳する処もまた一奇観であろうと思われる。そこでこの種の動物の発光器はどんな仕掛けで出来ているものだろうと色々研究した結果、二種の区別が知れた。すなわち一種のものでは光を放つ液体を分泌する腺を備え、他の種類では動物の組織の一部が発光するのだそうである。後者に属する発光器にはこれに附属したレンズや反射鏡のごときものを備えた極めて精巧なものもあるという話で、また発光器の中には体の内腔にあって透明な肉を通して光を放つものもあるそうである。前に述べたソーマトランパスなどでは総計二十二個の発光器を分類するとおよそ十種類のおのおの
(明治四十年十月二十一日『東京朝日新聞』)
(三)熱の無い光線
如何なる作用で光を発するかという事はまだよく分らぬ。しかし一つ注意すべき事は、この種の発光器は大抵光線を出すばかりで熱を出さぬ。これに反して人工的の光ではいつも熱が伴うて起る。六かしく云えば機械力なり電気なりまた化学作用なり如何なる方法によるも熱くない光を作る事は出来ぬ。つまり使ったエネルギーの一部は必ず熱に変じて消費される、すなわちそれだけ余計な勢力を損している。しかるに造物者の手製の深海のランプはかくのごとく理想的に経済的にしかも美術的に出来ているのである。
(明治四十年十月二十二日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十四
水雷破壊器の発明
今度米国政府のためにアンリ・スタンフィーバンという仏国人が
(明治四十年十月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十五
火星の近状
今年の夏、火星が我が地球に最も接近した位地に来ていた頃、米国のロウエル天文台ではこの好機会を利用して種々の観測をした。その結果この星の表面を縦横に走っている運河のようなものが南北両極の氷塊の消長につれて隠見する有様が仔細に知れた。その模様を見ると火星の上にはどうしても智能を備えた人類のごときものが棲息していると考えざるを得ないと該天文台長のロウエル氏は断言している。また同台からは一隊の学者をアンデス山頂に派遣して火星の写真を撮らせたそうであるから、定めて有益な知識を
(明治四十年十月二十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十六
英国南西部の海岸で年々にとれる魚の総数を漁夫の数に割り当てて統計してみると、漁夫一人の
(明治四十年十月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十七
蟻が温度の変化に対してどれだけの感覚力をもっているかという事を調べた人の説によると、大抵の蟻は摂氏の〇・五度くらいなわずかな変化でも識別するそうである。また人間の眼には見えぬ紫外光線でもよく感じ、この光を当てると嫌って逃げると云っている。
恐水病の予防
昨年中パリのパストゥール免疫所で狂犬に噛まれた人のために恐水病予防の注射を行うた件数が七百七十三、その中で不幸にして該病のために死んだのはわずかに二人しかない。すなわち恐水病というものはほとんど全く予防する事が出来ると云ってもよい。
(明治四十年十月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十八
英国では帝室の保護の下に癌の研究のみをやっている所がある。その基本金の現額は十一万八千余ポンドで、そのうち四万ポンドは某富豪が金婚式の際に寄附したそうである。ここの所長のパシュフォード博士が近頃報告したところに拠れば、癌の療法と称するものは色々あるが、いずれもあまり確実な効験はない。評判のあったトリプシンもあまりきかぬ。今日のところやはり外科手術で患部を取り去る外はあるまいという事である。
(明治四十年十月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]二十九
海水用セメント
普通のセメントは長く海水中に在れば次第に分解して崩れるので、これを防ぐ方法はないかと色々研究した人の説によれば、少量でも
銅鉱の電気分解
(明治四十年十月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十
水底信号機
霧の深い海上を航海する時には、往々海岸や他船の近づいた事を知らずにいて坐礁や衝突の災を招く事がある。これを防ぐためこの頃行われ始めた方法は、海岸ならばそこに繋留した灯台船の底に
(明治四十年十月三十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十一
世界一の高圧電流
米国ミシガンのマスケゴン電力会社で昨年来使用している高圧電流は七万二千ボルトの高圧でけだし世界第一と称せられている。その電線の経路九十二マイルの間は近辺の樹林を切り開き、また人の近づかぬように不断
地下電車鉄道の衛生問題
地下鉄道で長い間
(明治四十年十一月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十二
有益な鼠
北米に産する地鼠の一種に
(明治四十年十一月八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十三
世界第一の巨船
現今世界で最大最速の汽船ルシタニア号は去る九月アイルランドのクイーンスタウンよりニューヨークまで二千七百八十二
ルシタニアは首尾の長さ七百六十フィート、幅八十八フィート、高さが六十フィート余と云えばずいぶん大きなものである。排水トン数は三万八千トンで、一航海に要する石炭が五千トン。それから機関はタービン式で六万八千馬力出る。千五百トンの荷物と二千二百人ほどの乗客の外に船員の数が八百二十七名と称している。
(明治四十年十一月九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十四
北極探検気球隊の消息
気球を利用して北極を探検せんと企てたウェルマン氏の一隊は志を遂げずして去る九月ノルウェーに帰ったそうである。始めフォーゲルベー島まで船で進み、そこで気球を浮べたが
(明治四十年十一月十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十五
気球の競走
先々月ベルギーの首府で開かれた万国の気球研究者の会で高価な盃を懸賞にして気球の競走をやらせた。この競走に加わった気球は三十四あったが、最長の距離に達して月桂冠を得たのはドイツの気球で丁度千キロメートルを航した。それに次ぐべき距離に達したのはスイスのと英国のとであったという。来年はロンドンでこの会を開くとの事である。
(明治四十年十一月十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十六
ドイツの製粉研究所
ドイツ人がすべての工業の発達を計るためにその根本たる科学的の研究に注意する事は今に始めぬ事だが、今度また
(明治四十年十一月十二日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十七
ロシアの蟻
露国のカザン大学は古来有名な科学者の出た処である。近頃ここのルスツキーという動物学者の著わした『ロシアの蟻』と題する書のごときも
(明治四十年十一月十三日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十八
世界で最大のダイアモンド
近頃トランスバール政府ではその所有に属する世界最大の
(明治四十年十一月十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]三十九
洋食に用いるトマトの来歴を調べた人の説によると、この植物は十六世紀の中頃に南米ペルーからスペインあるいはポルトガルに渡りそれから欧洲に拡がったものである。しかしその頃は単に飾り物に使うだけの事で栽培もあまり盛んでなかったが、十九世紀になって後だんだん食用せらるるようになったそうである。
(明治四十年十一月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十
ノルウェーの
ノルウェーで結婚式の時に用いる木彫の
リウマチスと蜂の毒
蜂に刺されるとリウマチスが
(明治四十年十一月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十一
一種の迷信
英国デボンシャイアのある町に百二十年来営業を続けている牛肉屋があるが、開店の昔から今日まで店に屋号というものがない。この店の先祖がどういう訳だか店の名を付けなかったが、商売は非常に繁昌し子孫代々名無しの牛屋で通っている。名を付けると先代以来の幸運に障るというような迷信から子も孫も屋号を付けなかったためだそうな。
(明治四十年十一月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十二
ラジウムの新産地
従来ラジウムの産地と云えばほとんどボヘミアに限られていたが、この頃アルプス山で有名なシンプロン
水の清浄法
近頃汚水から
(明治四十年十一月二十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十三
長距離の急行列車
去る九月十六日、北米の大西鉄道では二百六十三マイルの間を一度も停車せずに走る別仕立の三等客車を出したが、平均一時間に五十三マイルの速度で首尾よく目的地に達した。こんな長距離の急行はあまり例のない事である。
海底のランプ
近頃米国のデイオンという人が専売特許を得た海底灯というのは、港などの水底に強烈な電灯を点じて、闇の夜や霧のある時入港を容易ならしむる仕掛けであるそうな。
(明治四十年十一月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十四
象を馴らす事
アフリカのコンゴーでは象の
(明治四十年十一月二十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十五
眼の濫用
近頃スコットという人が読書の眼に及ぼす害について某雑誌に述べている。その中に次のような事を云っている。「元来人類の眼はかなり遠距離の物体を見るように進化して出来ているものであるが、近年のように書籍や新聞雑誌などが無闇に沢山になっては一通りでも眼を通すのはなかなか大抵の事でない。それで眼というものの天然の役目の外に、新しいしかも不馴れな役目が増したから早晩どうしても何等かの害を生ずるようになる。」少年などにはあまり必要もない読書をさせぬようにせねばなるまいという事である。
(明治四十年十一月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十六
大洋中の拾い物
本月十四日の本紙に横浜の人が北太平洋で鮫漁中に英文の手紙の入った空瓶を拾うた記事が出ていたが、近着の科学雑誌を見ると次のような事が載せてある。「ウードジョーンスという人が一昨年の暮にインド洋から空瓶を数個海中に投じ、その中に手紙を封入して誰でもこれを拾うた人はその場所と時日を通知するように依頼してあった。ところが昨年の五月にアフリカのソマリの海岸でその中の一本を拾い上げ、また今年の七月同じ処で他の一本を拾い上げた。それでインド洋の真中から西の方へ向うた不断の潮流がある事が知れる、云々」。北太平洋のもあるいはこの仲間でないとも限らぬから
(明治四十年十一月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十七
英国の軍用軽気球
先月初、ロンドン附近で軍用軽気球の試乗があった。アルダーショットからロンドンまで一時間二十四マイルの速度で飛行し、
狂人の眼と髪
これはスコットランドの話で我邦には応用し難いかも知れぬが、同地の
(明治四十年十一月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十八
寒さと尿量
寒い時に三時間運動せずにいると尿酸の排出量が平日の五割増す。しかし筋肉を運動させていれば一割強くらいしか増さぬ。これに反して暖かに着物を着て盛んに運動すれば却って三割くらい減ずる。それで尿酸の分泌の幾分は体熱の損失に対する反応として起るものだろうという。
新発明の
スウェーデン政府の電話局で近頃発明された耳喇叭は交換手の耳にさし込んで通話をするためのものであるが、これはまた耳の遠い人のためにも重宝なものであるそうな。この器械の電線は耳の背後などに隠せば少しも目に立たぬそうである。
(明治四十年十二月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]四十九
宝石の人造法
近頃仏国のポルダという人が
(明治四十年十二月十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十
濃霧を消散する新案
ロンドンは霧の名所であるそうなが、近頃マジョラという人がこの霧を消す新案をして気象台でこれに関する研究をしているそうな。その法はと聞いてみるとずいぶん大仕掛けなものである。直径六フィート、高さ六十フィートの鋼鉄製の大砲を作り、その中でアセチリンその他の
(明治四十年十二月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十一
坑夫に賞牌
英皇エドワード陛下は今度新たに二種の賞牌を制定せられた。これは鉱山の坑夫などで多数の人の生命を救い危険を除くために自分の生命を賭した者に授与するはずだという。その
結核病研究の万国会議
来年九月二十一日より十月十二日まで米国ワシントン府で表題の会議が開かれる。全体七部門に分れて、結核に関する病理、療法、予防その他一切の会議をするはずで、また開会中は該病に関する展覧会を開いて公衆に観せるそうである。
(明治四十年十二月十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十二
ペストと蚤
ペストと云えば鼠を聯想するが、鼠族の間にこの病毒を拡めるものは蚤だという事がだんだんに確かめられるらしい。ある人が
(明治四十年十二月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十三
人造藍と天然藍
(明治四十年十二月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十四
水晶の鋳物
水晶は
(明治四十年十二月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十五
巨船モーレタニア
先日ルシタニア号の話を掲げたが、その姉妹船モーレタニア号に関する概略の数字だけ比較のために挙ぐれば、船の長さ七百六十フィート、幅が八十八フィート、トン数三万二千。乗客の数は一等五百六十三人、二等四百六十一人、三等千百三十八人、試運転の
女優と無線電信
有名な仏の女優サラ・ベルナールは近頃北米と欧洲との間に開通された無線電信について次のような事を云っている。「このようにヨーロッパとアメリカとが虚空を
(明治四十年十二月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十六
天然色写真
先日本紙に載せてあった天然色写真の新法よりなお一層新しい法が見出された。それはウワーナー・ポオリーの法と云うので、去る十月ロンドンで開かれた天然色写真会で展覧に供した。先日のリュミエール会社のオートクローム板は三色の澱粉を混合して作ったものだが、今度のは種板の上に三色の細い線を並べたもので大体の理窟は前のと変りはない。色のついた線を作るには細い格子のようなものと
(明治四十年十二月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十七
婦人と動物学者
テキサス大学のモントゴメリー教授は、衣服その他の粧飾に鳥類の羽毛を使用する事を絶対的に禁じたいと論じている。単に米国で鳥の濫殺を禁ずるのみならず、輸入もやめなければ無効である。鳥の捕獲が盛んになればますます羽毛が安くなり使用高が次第に増して結局は鳥の種類が絶えるようになるだろうと云っている。
(明治四十年十二月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十八
蜂に
アンモニア水が蜂の針の毒を消す事はよく人の知る処であるが、ある人の経験では、それよりも
火山の変形
昨年四月イタリアのヴェスヴィアス山がやや烈しい噴火をやったが、その後同国陸軍地理局で測量を行った結果によると、噴火前における最高点の高さ海抜千三百三十五メートルあったのが千二百二十三メートルに減じている。その代りに
(明治四十一年一月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]五十九
結核病と食物
結核菌を接種した動物に種々の食物を与えて病の経過を試験した結果によると、脂肪分を主に与えたものは四十日くらいで死し、含水炭素殊に砂糖を多く与えたものは八十七日くらいで死んだ。これに反して含窒素食物を主に食わせた動物は三百七十一日生きていたそうである。
(明治四十一年一月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十
灯台の光色
海上で遠い灯台を見出した時その光の色が赤だか青だか分りにくい事がある。その時は双眼鏡か何かで見て肉眼で見たのと比較し、もし肉眼で見る方がよく見えればその灯色は赤光で、そうでなければ青か白だという。
屍体とX光線
生きている人体の腹部をX光線で照らし写真を撮っても胃や腸を識別する事が出来ぬが、死後間もなく写して見ると明らかにこれらの臓腑の
(明治四十一年一月二十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十一
猿と蛇
いろいろの動物について試験してみると、蛇を怖れるは
北米シカゴ市ではミシガン湖から用水を取っているので市中の下水を湖水に流し込む訳に行かぬ。それで下水
(明治四十一年一月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十二
迅速なるX線写真
従来X線で人体の内部などを写真するに当って一つの欠点は照射時間の長い事である。つまり早撮りが出来ぬから運動している臓腑を写す事が出来ぬ。もしこの早撮りが成効すれば体中の活動写真が撮れる事になるのである。しかるに近頃ローゼンタールは特別な感応コイルを発明し、これによってX線を生ずれば喉頭の写真をわずか二秒間で撮る事が出来るという事を発表した。もう一息早くなれば遂には内臓の活動写真も出来るだろうと思われる。
(明治四十一年一月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十三
マホメットの墳墓
トルコ皇帝陛下は近頃メジナにある
女皇陛下の電話
昨年の暮ポルトガルの女皇アメリー陛下がパリに御滞在中の出来事である。一日パリ・ロンドン間の長距離電話に故障があってただ一線しか通じないので、電話申込人は何十人もつかえて順番の来るのを待ち兼ねている有様であった。その時ブリストル旅館から英京のバッキンガム宮へ通話を申込んだものがある。交換手は「七十五番ですからも少し御待ちなさい」とやると失望の嘆声が聞えてやがて「アメリー女皇から英皇へ御話しがしたいのだが」と云った。そこで交換局では
(明治四十一年二月四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十四
煤煙問題
ロンドン地下電鉄会社の発電所で
面白い電灯
近頃室内に取りつけまたは卓上に置く電灯に面白い自働装置を附したものが工夫された。例えば人形が電灯を持って立っているのならば灯が点ると同時に電灯を高く振りあげる。また柱などに竜や鬼の頭をつけ、夕方が来るとこれが口を開けて電灯を吐き出すような仕掛けになっている。
(明治四十一年三月六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十五
過失より起る火災
放火や
新しい白熱電灯
近頃トムソン・ボーストン会社で専売特許となった白熱灯の炭素線は純粋な石墨だという。これを作るには、油煙を電炉の中で摂氏三千度に熱したものに或る糊を混じて線状とし、これを四百度に熱して糊を炭化させるのだそうである。
(明治四十一年三月七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十六
黄金の産額
昨年中の世界各地で採掘された黄金の総額は六百七十四トンで、もしこれを集めて一塊とすればザット一丈四方に高さ九尺くらいになる勘定である。この内ほとんど三分の一はアフリカの南部から、また四分の一は北米合衆国およびアラスカから出たのだそうな。ついでにアメリカ発見以来去る明治三十三年までに該地で採った金の価額を見積ってみると二百五十億円ほどになるという。
樹木と遺伝
(明治四十一年三月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十七
新しい魔睡剤
塩化エチールを魔睡剤に使用せんと試みた人がある。その近頃に発表した論文によると、この薬剤に酸素を混じて試験用の動物に吸入させてみたが一時間ほどごく安静に魔睡し、睡りからさめる時も速やかに
写真の無線電送
近頃写真電送という事が大分評判になったが、従来の法はみな電線によって電流を伝えるのである。ところが、昨年の暮に仏国で試験したペルジョンノオ式というのは、長い導線を引かずに無線で写真を電送するのだそうな。パリとマルセーユ間で試験の結果、好成績を得たと伝えられている。
(明治四十一年三月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十八
真珠の採取にX光線の応用
世界中の真珠産地で年々に採る母貝の数は
(明治四十一年三月二十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]六十九
光線と眼
薄暗がりで読書などすると、じきに眼が疲れて来る。永く続けると非常に眼を害するのは誰も知る通りであるが、またあまり強い光も眼に害がある。例えば太陽などを長く見つめるのは恐ろしい病の基である。インドでは宗教上の迷信から太陽を強いて直視するために
(明治四十一年三月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十
料理に音楽
近頃シカゴ市で電気応用諸器械の展覧会があったが、これに関する同地の新聞の記事中に次のような奇抜な意匠が述べてある。すなわち料理番が肉なり野菜なりを
(明治四十一年三月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十一
土星の輪
太陽系に属する諸遊星の中で土星を取巻いている輪ほど不思議な面白いものはない。ガリレオ以来幾多の星学者、物理学者の脳を苦しませた代物である。それでその形状なども充分に研究されていた訳であるが、この頃仏国のある高山の天文台で観測していたら従来人の知っている輪の外側にもう一つボンヤリした輪のある事を発見した。この輪がこれまで発見せられなかったのは、従来の観測は皆低地でするのみであったため、下層の濁った空気に
科学の通俗講義集
近頃コロンビヤ大学で最近の科学の進歩を通俗的に講義した小冊子二十二篇を出版した。なるべく専門的な術語などを使わずにごくわかりやすく説いたものである。代価は一冊五十銭くらいで同大学の刊行になっている。この種の通俗講義の必要は何処でも感ぜられていたが、今率先してこれに着手したのは同大学の美挙といわねばならぬ。
(明治四十一年三月三十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十二
水蒸気を冷せば水になる事は日常目撃するところだが、すべての瓦斯体も適当の寒冷と圧力を加えれば皆液体になってしまうはずである。炭酸瓦斯などは通常の温度でも圧縮すれば液化するが、空気のごときは摂氏零度以下百四十度という極寒に会わぬといくら圧縮しても液体にならぬ。近来瓦斯を液体にする事が大変に進歩して大抵の瓦斯は皆液化されるようになったが、独り空気中に混ぜるヘリウムのみはどうしても液体にならなかった。しかるに今年三月初めに至って
(明治四十一年四月五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十三
露国政府と前世界の巨獣
近頃シベリアの東北部ヤクーツク地方で、前世界の巨象マンモスの遺骸が発見せられたので、露国政府ではその研究のために学者を同地方に派遣することとなり、同国学士院の動物学博士等数名が出張を命ぜられたそうである。約一年余の時日を費やす予定で、その費用として一万六千ルーブル(約一万三千円)を国庫より支出することとなったそうである。露国政府が純粋な科学の方面にも冷淡でない一つの例として御紹介するのである。
(明治四十一年四月八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十四
温泉中のヘリウム瓦斯
前条にヘリウムの事を述べたついでにもう一つこの瓦斯に関する話をする。近頃鉱泉中にこの瓦斯が含まれている事が知られた。仏国で調べた結果によると〇・一ないし五・三プロセントくらいの割合で含まれている。これを採取するには液化した空気で冷却し木炭に吸収させるそうである。この瓦斯はもと太陽中に存する事は日光の分析から知られていてそのためにヘリウム(太陽素)と名づけられたが、しかし地球上の空気中にも存するという事はわずかに数年前発見せられたのである。最も軽いそして他元素と化合し難いものである。近年ラジウムの研究が進むにつれ、ヘリウムはラジウムより変化して出来るものだという事が知れ、元素というものは変化せぬ物だという従来の考えを打破ったので科学者の注目をひいている。
(明治四十一年四月九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十五
唖に言語を教うる法
電話や蓄音機の発明に依って有名なグラハム・ベル氏はまた唖者に言語の発音を教うる法に関する著者として知られている。近頃その著書の再版が出た。この法はもと著者の父メルザル・ベル氏の考案したものである。一種の記号で文字の代用をさせ、またその記号の形によってその音を発するには舌や口腔を如何なる位置形状にすべきかという事を明らかに示したものである。この方法によって言語を発するようになった唖者は沢山あるそうな。
(明治四十一年五月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十六
空中の巡査
近刊の某地学雑誌に上のような表題を掲げて鳥類の保護を論じている人がある。その人の説によれば、鳥類が農作物の害虫を駆除する功は非常なもので、もし鳥類濫殺の結果有益な鳥が絶滅に近づく暁には、地上の植物は大半滅亡するに至るであろうというている。
植物標本の保存
植物を保存する時に一番物足らず思う事は美しい緑が
(明治四十一年五月六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十七
人を載せる
昔鎮西八郎が大紙鳶にその子を縛して伊豆の島から空に放ったというのは馬琴の才筆によって面白く描かれているが、ここに述べるのは昨年の暮北米での話である。大きな紙鳶に中尉某を載せて地上百六十八フィートの処まで上げたそうである。この紙鳶は蝶の羽根を立てたような形の小さい紙鳶を三千四百個ほど組合せて風を受ける表面を多くしたものである。
回教では新月形を記章とする事あたかも
(明治四十一年五月十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十八
写真測量
(明治四十一年五月十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]七十九
変った製氷法
ドイツの南部で冬期人造氷を作る法というのを聞いてみると、ちょっと変っている。先ず長さ二丈くらいの大きな櫓を作り、その天井と中段とに横木を並べて置く、そして天井の上に水道を引いてその口から噴き出す水を天井一面に散乱させる。すると小さい飛沫になって落ちる水は寒い空気に触れ、皆
(明治四十一年五月十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十
水の消毒
空気中に電気の火花を通ずる時一種の臭気を帯びたるいわゆるオゾン
(明治四十一年五月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十一
パリの高塔
有名なパリのエイフェル塔は近年しばしば無線電信の発信所に用いられたが、近頃仏国学士院のブーケ・ド・ラグリー氏はこの塔を利用して
金剛石と炭
金剛石はほとんど純粋な炭素から出来たもので、これを空気中で高熱すれば燃えて炭酸瓦斯に変る事は人のよく知るところである。近頃ある人が金剛石を真空管内に封入し、これに強い陰極線を当ててみたところが、金剛石は摂氏二千度近く熱せられ真黒な
(明治四十一年五月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十二
学者の犠牲
英国のホールエドワードという学者はX線のために左の手全体と右の手の指とを失った。その犠牲の報酬として年金千二百円ほどと一時金八千円くらいとを貰う事になったと伝えられる。
メキシコ人の飲料
メキシコや中央アメリカ辺で一般に飲料として賞味するパルクというものがある。これは
(明治四十一年五月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十三
六千年前の肉塊
近頃エジプトの医学校で
(明治四十一年六月二日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十四
柔能く剛を制す
比較的に柔らかい鋼鉄の円板を急速度に廻転させ、その縁にごく硬い鋼鉄を当てると硬い方の鉄が容易に
蜂の智恵
仏国学士院の報告中にボンニエーという人が次のような実験の結果を述べている。一日庭に角砂糖をいくつか出しておいたら、やがて一群の蜜蜂がこれにとまってしきりに骨折っていたが、堅くて喰い欠く事が出来ぬと見えて一時飛び去ってしもうた。
(明治四十一年六月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十五
天然色活動写真の発明
活動写真を見て遺憾に思う事はこれに天然の色彩の欠けている一事である。しかるに近頃アルバート・スミスという人が天然色の活動写真を発明してこの欠点を補うに到った。尤も以前にアイヴスという人が三色写真を応用して三色の活動写真を一つの障子に重ね映じた事はあったが、何分にも三個の器械を合せ用いるには種々の困難があって到底広く実用に適するに至らず、そのままになっていたのである。しかるに今度スミス氏の発明したものでは、たた一つの幻灯器に一枚の長いフィルムを使って天然色を現すのである。その法は先ず実物の刻々の写真を感光膜に写す際、交互に赤と緑の障子を使って実物の赤い色ばかり撮ったものと緑色のみ撮ったものを交番に連ねる。かくして得たフィルムを普通の活動幻灯器で写し出し、同時にフィルムの後で赤と緑の膜を張った円板を廻転し、赤の光で撮った写真の出る時は赤の膜が来るように、緑の写真には緑の膜が出るようにすればよい。さすれば二色の写真が迅速に引続いて交互に現れるから、眼には丁度二色の写真を重ねて見るとほとんど同じ結果になり、従ってほぼ天然色に近いものが現れるのである。従来の三色写真に対しただ二色をもって如何なる程度まで天然色を模する事が出来るかは多少疑問であるが、とにかく相応の好結果を得たと伝えられている。この写真並びに幻灯に用いる赤緑二色の膜の色が最も研究を要するところであるらしい。
(明治四十一年六月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十六
写真の無線電送
写真電送という事が近頃大分流行の話柄となり、先達て仏国で無線電送の試験をしたとの記事もあったが、この頃また英国でクニューデンという人が非常に簡単な写真図画等の無線電送法を発見し大分評判になっているようである。その法はなんでもない。写真の種板が十分乾かぬうちに粉のようなものを振りかけると、光に感じている処だけ粉が粘着しそこだけ突起する。そこで今この種板の面に接近して針のようなものを万遍なく動かし、針の尖端が板の全面を隈なく通過するようにする。そして針と種板に発電器の両極をつないでおけば、針が種板の突起すなわち光に感じた部に触れるごとに電流が通る。この電流で適当の電波を起せば、この波は空中を伝わって目的地に達し受信器に感じて普通の無線電信と同様小さい針を動かす。この針の下には
(明治四十一年七月四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十七
死産児の鑑定法
嬰児の死体を検してこれが果して本当に死んで後分娩されたかあるいは出産後死亡したかという事を容易に判別する新法が近頃仏国学士院の報告に発表された。その所説に拠れば、疑問の死体をX線で透して撮影すれば、もし本当の死産なれば体内の機関は一つも写らぬが、少しでも空気を呼吸したものなれば胃だけが現れる。またもし胃と腸とが写れば、その子は出生後一時間ないし十四時間生存していたものである。もし数日栄養をとらず生きていたのなれば胃腸の外に肺並びに肝臓が写る。また数日間食物で養われたものなれば内臓諸機関はいよいよ明らかで、なお腸部に発生する
(明治四十一年七月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]八十八
科学者の不遇
科学者が世界の文明に貢献し自国の栄誉を高めつつあるにもかかわらず一般に不遇であるのは
蚊の撲滅
北米バルチモアーでは蚊のためにいろんな病気の
(明治四十一年十月二十五日『東京朝日新聞』)