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岩波茂雄宛書簡

一九三一年八月十七日

野呂栄太郎




拝啓

残暑かえって厳しき折柄いよいよ御清健のことと拝察よろこたてまつり候。

さて、「日本資本主義発達史講座」の件に関し、昨日編輯会議を開き、先日差上げたる私案及び貴店編輯部案を参酌さんしゃくして大体のことを決定つかまつり候間諸種の点に関し御懇談仕りたく、御多忙中恐縮に存じ候得共そうらえども御序おついでの節にでも御来駕を煩わし得れば幸甚に御座候処御都合如何に御座候也。もっとも問題は主として編輯及び出版の技術に関することと存じ候間御都合にて御多忙中態々わざわざ御足労煩わさずとも、ママ田氏を煩わし下されば事足りることとも存じ候。

まずは不取敢とりあえず御都合御伺いまで。

敬具

   八月十七日

栄太郎拝

  岩波様

    御侍史






底本:「野呂栄太郎全集 下」新日本出版社


   1994(平成6)年12月5日初版

※作品名は、便宜を考慮して、入力時に新たに付したものです。

入力:山田剛

校正:土屋隆

2005年3月19日作成

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