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練習曲

岸田國士




||おれはかうして雲を見てゐる。君はさうして新聞を読んでゐる。彼女は、こゝへ来て、どつちに先づ話しかけるだらう。

||二五高女卒頗富愛嬌不幸無支度先方職不望温情有方至急。

||あの下駄の音はあんまり落着いてるね。君は珈琲を飲むかい。

||飲む。信用及商品持込家財其儘証人不要手軽月賦も可。

||来たぞ、おい······

||長くお待ちになつて······

||ねえ、××子さん、僕は今、あの空に、あなたの影が映りはしないかと······

||ちよつと······をかしいわ、そつちを向いて······。何か面白いことが出てますの。






底本:「岸田國士全集20」岩波書店


   1990(平成2)年3月8日発行

底本の親本:「新選岸田國士集」改造社

   1930(昭和5)年2月8日発行

初出:「手帖 第一巻第一号」

   1927(昭和2)年3月1日発行

入力:tatsuki

校正:門田裕志、小林繁雄

2005年10月6日作成

青空文庫作成ファイル:

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●表記について