第一双の眼 の所有者
(むしゃくしゃした若い古物商。紋付と黄の風呂敷 )
第二双の眼の所有者
(大学生。制服制帽。大きなめがね。灰色ヅックの提鞄 )
第一双の眼(いや、いらっしゃい、今日は。よいお天気でございます。)(むしゃくしゃした若い古物商。紋付と黄の
第二双の眼の所有者
(大学生。制服制帽。大きなめがね。灰色ヅックの
第二双の眼(何を
(失礼いたしました。へいへい。えゝと、あなたさまはメフィストさんのご子息さん。今日はどちらへ。)
(何だ失敬な。)
(あ、左様で。あ、左様でございましたか。
これはどうもまことに失礼いたしました。たいへん飛び乗りがお上手でいらっしゃいます。)
(まだ何か
(さうさう。あなたはメフィストさんとはアウエルバッハ以来お仲がよろしくないのですな。ついおなりがそっくりなもんですから、まあちょっと相似形、さやう、ごく複雑な立体の相似形といふやうにお見受けいたしたもんですから。いや、どうもまことに失礼いたしました。)
(気を付けろ。間抜けめ。何だそのにやけやうは。)
(へいへい。なあにどうせ私などはへいへい云ふやうにできてるんですから。いや。それにしてもたゞ今は又もやとんだ無礼をはたらきました。ひらにひらにご容赦と。ところでお若いのにそのまん円な赤い
(気持ちの悪いやつだな。この
(あっ、ああ、なる程乱視。乱視でしたか。いや、それならば仕方ござんせん。なるほど、なるほど。とにかくしかしそれにしてもと、あんまりお帽子の
(えい、畜生まだ何か云ってやがる。何だ、きさまの眼玉は黄いろできょろきょろまるで
“Was f

(何だと。“Nein, mein J


そっちの方で判るかい。おまへのやうな人道主義者は
(ふん。支那人と思ったらドイツとのあひの子かい。)
(いゝえ。どう致しまして。お前こそ気をつけろよ。自慢らしくドイツなどをもち出したからこんなもんさ。へん。お前なんか気の毒な
(まだ見てるのかい。よくよく執念深いやつだ。
(へい。ちとお遊びに。)
(又にやけてやがる。どうせきさまは周旋屋か
(さよなら。ひよっこさん。大きなまちの
(えい。勝手にしろ。お別れにたゞ一言ご忠告いたします。電車がとまってからお降りなさいだ。)
(プイ。)