ある日小ぐまさんが
「小ぐまさん、これなんだか知つてる?」とききました。小ぐまさんは 一目みて、それがほゝづきだとわかりましたので、
「あら、いゝのね。ひとつでいいから下さいな。」といひました。
「まあ、ひとつ下さいですつて。とてもね、大事なのよ、あげられやしない。」とお猫さんはいひながら、皮をむいて、ほゝづきの実をだしました。それをみると 小ぐまさんは、とても欲しくなりました。そして、自分のうちの畑のすみに、一本 ほゝづきの木があるのを思ひだして、
「ね、いゝでせう?
「まあ、二つにしてかへしてくれるのなら一つあげませう。ぢやあ、あした、きつとね。」と指切りをして、ひとつ、くれました。小ぐまさんはうれしくて うれしくて、その晩 一晩、そのほゝづきを手のなかにいれて、ながめたり、着物をきせてお人形さんにしたりしてあそびました。
× × ×
その
小ぐまさんの声があまり大きいので、お隣りのあひるさんがやつてきました。あひるさんは、たづねました。
「どうしたのですか、私にはなして下さい。」
小ぐまさんは自分の心配を、あひるさんにはなしましたら、あひるさんは小ぐまさんをかわいさうに思つて、わあわあ泣きました。二人の泣き声があまりに大きいので、
「お猫さん、ほんとにごめんなさい。」お猫さんは、そこでやつと、昨日小ぐまさんにほゝづきをあげたのは自分だといふことに気がつきました。
「