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いぬさん と おねこさん

村山籌子





 いぬさん と おねこさん が ストーヴ に あたりながら ハイカラな ゑほん を みて ゐました。


 いぬさん が まうしました。

「ぼく は なぜ こんな ハイカラな 犬 に うまれなかつたんだらう。このちぢれた毛 は どうだ」と じぶん の みじかい毛 を ひつぱりました。


「ああ あたし は どうして この ペルシヤねこに うまれなかつたんでせう。この 大きな 目※(感嘆符二つ、1-8-75)」と ゑほんの 猫を みて おねこさん は まうしました。

 二人 は がつかりして しまひました。が、ストーヴ の 火 が あんまり あたたかかつたので ねむつて しまひました。

 おしやうがつ ぐわんじつ の ばん のことで ありました。



 おねこさんが散歩してゐました。


 風が吹いてきて、おねこさんのかたかけが飛ばされました。かたかけは川の中へ。

 そこへ犬さんがやつてきて、二人で川のそこにしづんでゐるかたかけをみつけました。


「いぬさん。あなたは水およぎができるんでせう? とつて下さい。」とおねこさんがいひました。いぬさんは、

「こんなにさむくちやあ、とれない。なつになるまで待たう」と、いひました。


 それを見てゐた、あひるさんのおぢさんが、水の中にとびこんで、とつてくれました。

 二人は、あんまりうれしくて、おれいもいはずに家にかへりました。

 あひるのおぢさんは、ぶつ/\おこりましたが、のんきなおねこさんといぬさんは、それに気がつきませんでした。






底本:「日本児童文学大系 第二六巻」ほるぷ出版

   1978(昭和53)年11月30日初刷発行

底本の親本:「子供之友」婦人之友社

   1930(昭和5)年1月〜2月

初出:「子供之友」婦人之友社

   1930(昭和5)年1月〜2月

入力:菅野朋子

校正:noriko saito

2011年8月3日作成

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