ねずみさんはとてもなまけ者です。そのねずみさんが、ねずみさんのおかみさんの部屋にとんで帰つて言ひますのに、
「おかみさんや、早く着物を着換えなさい。一番いい着物に。帽子も一等いいのに。それから、わしにも一番いい服を出しておくれ。」
おかみさんは、ねずみさんの言ふことがよく分らないので、返事をしませんでした。ねずみさんは、大きな声でどなりました。
「下の
「それがさ、まあお聞き。今ね、わしがチユウチユウさんのとこの前を通つたのさ。そしたらお前、あぶらあげ、ね。あぶらあげを焼いてる
「ほんと? ぢや早くしないとお前さん、
二人は目の色を変へてお庭を走りぬけて、大きな門のそばを通つて、やつとこさ、大きなお部屋の前まで来ました。「おや、
熊さんはとてもをかしかつたので、フキ出しながら、
「お前さんみたいな夫婦はきつと道をまちがへるね。この机の上の穴を通つて、地下室へおいで。そこがチユウチユウさんのとこだ。」
二人はその路を出来る
「ごめん下さい。」とねずみさんが言ひますと、チユウチユウさんとそのおかみさんは、あぶらあげをたべたばかりの口をふきながら、出て来ましたので、ねずみさんとおかみさんはがつかりして、腰がぬけさうになりました。
「チユウチユウさんとこへなぞ、一生もう行くもんか。」と二人はプンプンおこつて帰つて来ました。気の毒なお話ですね。