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積木の町

スチーブンスン

新美南吉訳




積木で何でも造られる。

お城や宮殿、寺、波止場。

外では雨が降つてても

お家で私は積木する。


敷布は海でソファは山、

私はそこに町たてよう。

お寺や水車や宮殿や、

そして波止場や舩までも。


柱や壁のでかいやつ、

屋根には塔もおつたてよう。

階段などもつけてやらう。

そこには私の舩が来る。


波止場につく舩、沖の舩、

きけば水夫の歌の声。

ほうら階段おりて来る、

おくりもの持つ王様が。


もう飽いちやつた、もう止さう。

がらんと町はこはれちやふ。

積木はごちやごちやしてしまふ。

もうあの町は何もない。


けれど、あの町まだ見える。

お寺や宮殿、舩、水夫。

私が大人になつたつて、

私はあの町、思出さう。






底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版

   1978(昭和53)年11月30日初刷発行

初出:「新美南吉童話の世界|日本児童文学別冊」ほるぷ総連合

   1976(昭和51)年7月

入力:菅野朋子

校正:noriko saito

2011年1月4日作成

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