母親を無くした小供が、ある
夜、ふと眼を覚ました。その
室は二階で、傍には
親父をはじめ二三人のものが寝ていた。
と、
梯子段をみしみしと云わして、あがって来る者があったが、やがてそれが
障子をすうと開けて入って来た。それは死んだ母親であった。小供はおっ母さんが来たなと思って見ていると、その女は、入口の
火鉢や
炭取をかたよせてある処を通って、小供の
枕頭の方に来ようとしたが、その拍子に
衣服の
裾が炭取にかかると、炭取りはぐるりと左から右に動いてその位置が変った。その時、祖父をはじめ傍に寝ていた者は皆いっしょにうなされた。