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良心・第一義

夢野久作




  良心


財産を私有する勿れ

心念を私有する勿れ

汝の全霊を万有進化の流れと

共鳴一致せしめよ

常に無限なれ

万古に清朗なれ

良心は一切の本能が互いに統制し、自他の共鳴を完全にして、人文の進化を極致に導き来り、導きつつあり、導き行かんとする人類共通の最重大の本能也。

 本能の集合体也

[#改段]


  第一義


人間の思う事は皆妄想である

哲学でも宗教でも唯物思想でも何でも

人類文化は全部妄想の文化である

現代文化は第二義の文化である

この文も又······である

自然物は皆第一義の花を咲かし

第一義の実を結んでいるのに

人間ばかりは第二義の花と実を誇りとし

これがために第一義の真と美を犠牲にし

軽蔑している

汝が汝を支配する時

汝は死物となる

支配せず

支配せられざる汝は

生きた汝である

自然の汝である。






底本:「夢野久作全集7」三一書房


   1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行

   1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行

初出:「ぷろふいる 4巻5号」

   1936(昭和11)年5月

入力:川山隆

校正:土屋隆

2007年7月23日作成

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