静寂といおうか、閑雅といおうか、釣りの醍醐味をしみじみと堪能するには、寒鮒釣りを
冬の
鮒は、秋の半ば過ぎると、水田や細流から大きな流れへ落ちていく途中、充分に餌を採って、やがて暮れ近くなると静かな流れの深いところへ
寒鮒釣りは、岡釣りでもやれるが、舟釣りの方が楽しみが深い。
竿は極めてやわらかいものに妙味がある。八尺、一丈、二丈など、長い竿、短い竿、三、四本を用意して浮木釣りの場合は艫から扇形にならべ、そのかなめに当たるところに釣り人が座して、浮木の動きを凝視するのである。脈釣りの場合は舟の横から流れに対して竿を直角にならべ、穂先の動きが見やすい位置に座するのがよろしいのである。寒鮒の餌に当たる振舞は実に微妙である。実にものやわらかである。だから浮木や穂先の動きも極めて微かであるから、これを見のがすと釣れないことになる。無念無想、微動だものがさじと水面と竿先へ見入るのである。
仕掛けの全長は竿より五寸乃至一尺長くするのがよかろう。道糸は秋田の渋糸十五本撚りで充分である。
餌は、形の小さい色の赤い
寒鮒はどこでも釣れるというわけではない。昔から場所が定まっている。それは、厳冬になって川底の条件が永い間鮒が落ち込んで棲みつくのに適しているためであろうと思う。
東京近くでは中川の潮止橋の下流大場川の合流点付近、荒川の支流芝川、江戸川今井橋の上手、多摩川の矢口の渡しの下手など、釣り人のよく知っているところである。少し遠くはあるが、近年発見された場所で人気のあるのが、渡良瀬川の新古河三国橋上下、新利根川下流幸田橋上下、水郷上の島、狢塚、戸指川などである。ここらは、鮒の形がなかなかいい。時々尺鮒が出る。
寒鮒はおいしい。糸作りの