さて、当日になりました。
午前中に準備に取り掛かる。
濤川惣助氏の無線七宝の花瓶というのは、高サ二尺、胴の差し渡し一尺位で金属の
そうして、私の
大きな硝子箱の中に古代
いよいよ、聖上行幸に相成りましたので、幹部の人たちは御迎えを致し、御巡覧の間我々
すると、やや暫くして、会場の方に当って、
そうして、私の顔を見附けるなり手招きする容子がいかにもあわただしい。
私が側に行くと、
「君、あの矮鶏はおよそ幾日位で出来ますか」
と、いきなり変な質問、幾日で出来るといって
「あれは、もう一つ同じのが出来ますまいか」
と塩田氏は重ねていう。私は、何をこの人はこの際こんなことを自分に
「もう一つ同じものは出来ません。丸一年も精根をからしてやったものです。もう一度同じようなものを
「どうも始末が悪いな。困ったな。······実は君のチャボが聖上のお目にとまったのだ」
といったなり、塩田氏はばたばたと駆けて行ってしまった。
やがて、聖上には御還御に相成りました。
で、私は会場に参り、前約通り、もはや用済みのこと故、自作を持って帰るつもりで行くと、会頭初め幹部の人々が立っていて、
「ちょっと、
「先ほど、塩田氏がちょっとお話した事でしょうが、あなたのチャボが聖上のお目に留まり、御用品に遊ばさる旨仰せ出されたにつき、当会の光栄この上もないこととお受けを致しました。それでこの件はこの松尾がすべての責任を引き受け、若井とあなたとの間のことは充分な解決を附けますから、どうかそのおつもりに願う。何しろ、本会無上の光栄で、あなたに取っても名誉この上ないことである」
という話で、まるで
そうして、自作は、宮内省御買い上げという下げ札が附いて開会期中そのまま陳列することにして公衆の展覧に供した。これはお