「歩哨に立って大陸の夜空を仰いでいるとゆくりなくも四ッ橋のプラネタリュウムを想いだした
······」と戦地の友人から便りがあったので、周章てて四ッ橋畔の電気科学館へ行き六階の劇場ではじめてプラネタリュウムを見た。
感激した。陶酔した。実に良かった、という外よりはない。既にして場内アナウンスの少女の声が、美しく神秘的である。それが終ると、場内にはにわかに黄昏の色が忍び込んで、鮮かな美しさだ。天井に映された太陽が西へ傾き、落ちると、大阪の夜の空が浮び出て来る。降るような星空だ。月が出て動く。星もいつか動く。と見る間に南極の空が浮びあがって、星の世界一周が始まったのだ。
などとこんな説明で、その浪慢的な美しさは表現できぬ。われを忘れて仰いでいると、あろうことか、いびきの音がきこえて来た。団体見学の学生が居眠っているのだった。たぶん今は真夜中だと感ちがいしたのだろう。それほど、プラネタリュウムが映しだす夜のリアリティは真に迫っていたのである。