まだすこしもスポオツの流行 らなかつた昔の冬の方が私は好きだ。
人は冬をすこし怖 がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。
人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、
ベツレヘムの博士のやうに、眞つ白にきらきらしながら、冬を冒して行つたものだ。
さうして私たちの冬の慰めとなつてゐた、すばらしい焚火は、力づよく活氣のある焚火、本當の焚火だつた。
人は書きわづらつた、すつかり指がかじかんでしまつたので。
けれども、助力し合つて、夢みたり、失せやすい思ひ出をすこしでも引きとどめたりすることの、何んといふよろこび······
思ひ出はすぐそばにやつて來て、夏のときよりかずつとよくそれが見られたものだ。······人はそれに彩色までした。
かうして室内ではすべてが繪のやうだつた。
それにひきかへ戸外では、すべてが版畫の趣 になつてゐた。
さうして樹々は、自分たちの家で、ランプをつけながら仕事をしてゐた······