季節にちなんで、お雑煮の話をしたいと思う。
いったいお雑煮は、子供の時分から食べ慣れた故郷の地方色あるやり方が、いちばん趣味的で意義がある。
主婦の心がけ次第で、第一日は地方色豊かなお国風雑煮、二日目からは東京風の
かといって、強いてそうせねばならぬという理由はないのだから、各自の好みに任せてよい、とまずご承知おき願いたい。
わたしの経験からいうと、雑煮の中を賑々しくするためには、にんじんとか、だいこん、いもなどを入れる方がよいだろう。いもなども、原形のままの方が野趣があっておもしろい。なにか変わった趣を添えたいような場合には、いもに
だしは普通のかつおぶしだけでとるか、あるいは昆布だしにするのもよろしい。また、冬になると、焼きはぜなどよく贈られる家庭もあろうが、焼きはぜをだしに用いると、特殊の風味が出て楽しめる。
さて、いちばん肝要なのは、餅の焼き方である。昔から
雑煮のコツは、餅の焼き方にあるといってよいと思う。また、不細工に大きな餅のはいっているのはおもしろくない。ことに朝から
料理屋で出す小型マッチ箱ぐらいの大きさが、見た目の感じがよい。でも、客次第で餅の大きさも加減したらよい。若い者たちには多少体裁が不格好でも、大きいのを入れた方が歓迎されよう。出す相手と場合に応じて、それ相応のもてなしをすることは、単に雑煮だけにかぎらず、何事においても必須条件である。
白味噌の雑煮なども、変わっていてうまいものである。それから、のりは良質のもの||焼きのりでもよい||を、細かく
しかし、のりというものは、なかなかむずかしく、焼き方にコツがある。
現に、京阪などでは、
京阪のような大都会でさえ、のりの焼き方を知らないのであるから、いわんや地方ではいうをまたない。東京といっても、地方の人が大部分で、存分なのりの焼き方のできるひとは
要するに、雑煮はあり合わせで、見つくろって出せばよいのだ、ということを会得していただければ結構なのである。