哲学館主 井上円了述
美妙なる天地の高堂に座して、霊妙なる心性の明灯を点ずるものはなんぞや。だれも問わずして、その人間の一生なるを知る。果たしてしからば、その一生中、森然たる万有を照見するものは実に心灯の光なり。しかして、その光を養うものは諸学の油なり。ゆえに、諸学ようやく進みて心灯ようやく照らし、心灯いよいよ明らかにして天地いよいよ美なり。吾人すでに心灯を有す、あに諸学の講究を怠るべけんや。これ余が先年、妖怪学研究に着手したるゆえんなり。方今、大政一新、文運日に興り、明治の治蹟また、まさに大成を告げんとす。皇化のうるおすところ遠く
妖怪学とはなんぞや。その解釈を与うるは、すなわち妖怪学の一部分なり。今、一言にしてこれを解すれば、妖怪の原理を論究してその現象を説明する学なり。しからば妖怪とはなんぞや。その意義、
世人多くは、自己の心鏡に照らして知るべからざるものを妖怪という。ゆえに、甲の妖怪とするものは乙これを妖怪にあらずとし、乙の妖怪とするものは丙これを妖怪にあらずとす。愚民は、なにを見てもその理を知るべからず。ゆえに、事々物々みな妖怪となる。学者は、よく愚民の知るべからざるものを知る。ゆえに、その妖怪を指して妖怪にあらずという。しかれども、もし学者にして妖怪全くなしといわば、これ学者の妄見なり。例えば愚民の妖怪ありとするは、あたかも船に乗りて自ら動くを知らず、対岸のはしるを認めて真に動くと信ずるがごとし。ゆえに、学者は大いにその愚を笑う。しかして学者の妖怪なしとするは、あたかも地球に住息して太陽の上下するを見、これ地球の動くにあらずして太陽の動くなりと信ずるがごとし。もし
およそ妖怪の種類は、これを細別するにいくたあるを知らずといえども、これを概括すれば、物怪、心怪の二大門に類別するを得べし。物怪はこれを物理的妖怪と称し、心怪はこれを心理的妖怪と称す。しかしてまた、この二者相互の関係より生ずる一種の妖怪あり。例えば、鬼火、
世人、妖怪の種類を挙ぐるときは、耳目に触るるところの感覚上の妖怪に限るも、余のいわゆる妖怪は感覚以外に及ぼし、
妖怪学は哲学の道理を経とし緯として、四方上下に向かいてその応用の通路を開達したるものなり。もし哲学の火気を各自の心灯に点じきたらば、従来の千種万類の妖怪、一時に霧消雲散し去りて、さらに一大妖怪の霊然としてその幽光を発揚するを見る。これ、余がいわゆる真正の妖怪なり。この妖怪ひとたびその光を放たば、心灯の明らかなるも、これとその力を争うあたわずして、たちまちその光を失うに至るべし。あたかも旭日ひとたび昇りて、衆星その光を失うがごとし。仮にこの大怪を名付けて、これを理怪という。余の妖怪研究の目的の、仮怪を払い去りて真怪を開き示すと唱うるゆえん、ここに至りて知るべし。
理怪とはなにをいうや。無始の始より無終の終に至るまで、無限の限、無涯の涯の間に、
吾人、仰いで
かくのごとく仮怪を払い去れば、人をして超然として迷苦の関門外に独立せしむることを得、また、かくのごとく真怪を開ききたらば、人をして泰然として歓楽の別世界に安住せしむることを得べし。ゆえに妖怪研究の結果は、心内の暗天地に真知真楽の光明を与うるにあり。これ余がその功、鉄路、電信の架設に譲らずというゆえんなり。
世人、一方には妖怪を信じて事実明確、疑うべからざるものとし、一方にはこれを排して無根の妄説なりとす。しかして、これを信ずるものは、単にこれを真とするのみにて、さらにその真なるゆえんを証明せず。いわゆる独断なり。また、これを排するものは、単にこれを虚なりとするのみにて、さらにそのしかるゆえんを説示せず。これまた独断なり。しからざれば懐疑の弊を免れず。これみな説明の、そのよろしきを得ざるものにして、到底一致することなかるべし。けだし、この二種の論者の間に、一条の
余の妖怪説明は哲学の道理によるというも、妖怪中物怪のごときは、その説明は理学をまたざるべからず。また、人身上に発する妖怪のごときは、医学の解釈によらざるべからず。ゆえに余は哲学を礎とし、理学、医学を柱とし壁とし、もって妖怪学の一家を構成せんとす。
妖怪の種類は、さきに大別するところによれば、物怪、心怪、理怪の三種に分かち、物怪、心怪を仮怪とし、ひとり理怪を真怪とするなり。今、「妖怪学講義」もこの分類に従って順序を立つべきはずなるも、余はこれを諸学科の上に考えて説明を与えんとし、かつ、『哲学館講義録』の上において講述せんとする意なれば、さらに左のごとき部門を設くるに至る。
妖怪学講義
第一類 総論
第二類 理学部門
第三類 医学部門
第四類 純正哲学部門
第五類 心理学部門
第六類 宗教学部門
第七類 教育学部門
第八類 雑部門
これ実に講義の順序なり。もし、その各部門の種類を挙ぐれば左のごとし。第二類 理学部門
第三類 医学部門
第四類 純正哲学部門
第五類 心理学部門
第六類 宗教学部門
第七類 教育学部門
第八類 雑部門
総論 定義、種類、原因、説明等
理学部門 天変、地異、奇草、異木、妖鳥、怪獣、異人、鬼火、竜灯、蜃気楼 、竜宮の類
医学部門 人体異状、癲癇 、ヒステリー、諸狂、仙術、妙薬、食い合わせ、マジナイ療法の類
純正哲学部門 前兆、予言、暗合、陰陽、五行、天気予知法、易筮 、御鬮 、淘宮 、天元、九星 、幹枝術、人相、家相、方位、墨色 、鬼門、厄年、有卦無卦 、縁起の類
心理学部門 幻覚、妄想、夢、奇夢、狐憑 き、犬神、天狗 、動物電気、コックリ、催眠術、察心術、降神術、巫覡 の類
宗教学部門 幽霊、生霊、死霊、人魂、鬼神、悪魔、前生、死後、六道、再生、天堂、地獄、祟 、厄払い、祈祷 、守り札、呪咀 、修法、霊験、応報、託宣、感通の類
教育学部門 遺伝、胎教、白痴、神童、記憶術の類
雑部門 妖怪宅地、怪事、怪物、火渡り、魔法、幻術の類
これ大体の分類に過ぎず。そのうち二種もしくは三種の部門に関係を有するものあるも、余は講義の便宜に従って、随意に一方の部門にこれを掲ぐ。例えば幽霊のごときは、心理学に関係を有するもこれを「宗教学部門」に掲げ、巫覡のごときは、宗教学に関係を有するもこれを「心理学部門」に掲ぐ。また、第一類 総論
第一編 定義 第二編 学科 第三編 関係 第四編 種類 第五編 歴史 第六編 原因 第七編 説明
第二類 理学部門
第一種(天変編)天変、日月、蝕 、異星、流星、日暈 、虹
、風雨、霜雪、雷電、天鼓、天火、蜃気楼、竜巻

第二種(地妖編)地妖、地震、地陥、山崩れ、自倒、地雷、自鳴 、潮汐 、津波、須弥山 、竜宮、仙境
第三種(草木編)奇草、異穀、異木
第四種(鳥獣編)妖鳥、怪獣、魚虫、火鳥、雷獣、老狐 、九尾狐 、白狐 、古狸 、腹鼓 、妖獺 、猫又 、天狗
第五種(異人編)異人、山男、山女、山姥 、雪女、仙人、天人
第六種(怪火編)怪火、鬼火 、竜火、狐火 、蓑虫 、火車、火柱、竜灯、聖灯、天灯
第七種(異物編)異物、化石、雷斧 、天降異物、月桂、舎利
第八種(変事編)変化 、カマイタチ、河童 、釜鳴 り、七不思議
第三類 医学部門
第一種(人体編)人体の奇形変態、死体の衄血 、死体強直、木乃伊
第二種(疾病編)疫、痘、瘧 、卒中、失神、癲癇 、諸狂(躁 性狂、鬱 性狂、妄想狂、時発狂、ヒステリー狂等)、髪切り病、恙虫
第三種(療法編)仙術、不死薬、錬金術、御水、諸毒、妙薬、秘方、食い合わせ、マジナイ療法、信仰療法
第四類 純正哲学部門
第一種(偶合編)前兆、前知、予言、察知、暗合、偶中
第二種(陰陽編)河図 、洛書 、陰陽、八卦 、五行、生剋 、十干、十二支、二十八宿
第三種(占考編)天気予知法、運気考、占星術、祥瑞 、鴉鳴 き、犬鳴き
第四種(卜筮 編)易筮 、亀卜 、銭卜 、歌卜 、太占 、口占 、辻占 、兆占 、夢占 、御鬮 、神籤
第五種(鑑術編)九星 、天元、淘宮 、幹枝術、方位、本命的殺 、八門遁甲
第六種(相法編)人相、骨相、手相、音相、墨色 、相字法、家相、地相、風水
第七種(暦日編)歳徳 、金神 、八将神 、鬼門、月建 、土公、天一天上、七曜、九曜、六曜、十二運
第八種(吉凶編)厄年、厄日、吉日、凶日、願成就日、不成就日 、有卦無卦 、知死期、縁起、御弊 かつぎ
第五類 心理学部門
第一種(心象編)幻覚、妄想、迷見、謬論 、精神作用
第二種(夢想編)夢、奇夢、夢告、夢合 、眠行、魘
第三種(憑付 編)狐憑 き、人狐 、式神 、狐遣 い、飯綱 、オサキ、犬神、狸憑 き、蛇持ち、人憑 き、神憑 り、魔憑 き、天狗憑 き
第四種(心術編)動物電気、コックリ、棒寄せ、自眠術、催眠術、察心術、降神術、巫覡 、神女
第六類 宗教学部門
第一種(幽霊編)幽霊、生霊 、死霊、人魂 、魂魄 、遊魂
第二種(鬼神編)鬼神、魑魅 、魍魎 、妖神、悪魔、七福神、貧乏神
第三種(冥界編)前生、死後、六道、再生、天堂、地獄
第四種(触穢 編)祟 、障 り、悩み、忌諱 、触穢、厄落とし、厄払い、駆儺 、祓除
第五種(呪願 編)祭祀 、鎮魂、淫祀 、祈祷 、御守、御札、加持、ノリキ、禁厭 、呪言 、呪咀 、修法
第六種(霊験編)霊験、感応、冥罰 、業感、応報、託宣、神告、神通、感通、天啓
第七類 教育学部門
第一種(知徳編)遺伝、白痴、神童、偉人、盲唖 、盗心、自殺、悪徒
第二種(教養編)胎教、育児法、暗記法、記憶術
第八類 雑部門
第一種(怪事編)妖怪宅地、枕返し、怪事
第二種(怪物編)化け物、舟幽霊、通り悪魔、轆轤首
第三種(妖術編)火渡り、不動金縛り、魔法、幻術、糸引き
以上数種の妖怪は、学科の部門に応じて八類に分かちたるものなれば、これを『哲学館講義録』に掲げ、第七学年度講義録をもって「妖怪学講義録」となさんとす。それ本館発行の講義録は毎年十一月上旬初号を発行し、翌年十月下旬に至りて完結するを例とす。よって、本年十一月上旬より発行する講義録に「妖怪学講義」を掲げ、これを他学年の講義録に区別せんために、第七学年度講義録と名付くるなり。しかして、その講義は理学、哲学諸科の原理に照らして説明を付するものなれば、これを通読するものにひとり妖怪の道理を知らしむるのみならず、あわせて各学科の大要を講究するの便を得せしめ、決して『哲学館講義録』の名義にたがわざらんことを期す。そもそも余が妖怪学研究に着手したるは、今をさること十年前、すなわち明治十七年夏期に始まる。その後、この研究の講学上必要なる理由をのべて、東京大学中にその講究所を設置せられんことを建議したることあり。これと同時に、同志を誘導して大学内に不思議研究会を開設したることあり。当時、余の意見に賛同して入会せられたるものは左の諸氏なり。
三宅雄二郎 田中館愛橘 箕作 元八 吉武栄之進 坪井 次郎 坪井正五郎 沢井 廉 福家梅太郎 棚橋 一郎 佐藤勇太郎 坪内 雄蔵
しかして、その第一会は、明治十九年一月二十四日、大学講義室においてこれを開きたり。その後、会員ようやく増加せしも、余久しく病床にありて、その事務を斡旋することあたわざるに至り、ついに休会することとなれり。また、当時全国の有志にその旨趣を広告して、事実の通信を依頼したることあり。その今日までに得たる通知の数は、四百六十二件の多きに及べり。
またその間、実地について研究したるもの、コックリの件、催眠術の件、魔法の件、白狐の件等、大小およそ数十件あり。その他、明治二十三年以来、全国を周遊して直接に見聞したるもの、またすくなからず。かつ数年間、古今の書類について妖怪に関する事項を捜索したるもの、五百部の多きに及べり。今その書目を挙ぐること左のごとし。
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この書目は、余が手帖中に記載せるままここに掲ぐ。序次錯雑なるも、請う、これをゆるせよ。〔原本はいろは順の旧仮名遣いで配列されているが、五十音順に直した。〕
あ
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い
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の部宇治拾遺〔物語〕 雨窓閑話 空穂物語〔宇津保物語〕 雲萍雑志
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の部王充論衡 往生要集 王代一覧 欧米人相学図解 大磯名勝誌 大雑書 大雑書三世相 鋸屑譚 小田原記 織唐衣 温知叢書
か
の部怪談御伽桜 怪談御伽童 怪談実録 怪談諸国物語 怪談全書 怪談登志男 怪談録 貝原養生訓 怪物輿論 河海抄 学芸志林 格致叢書 花月草紙 花史左編 家相図説大全 家相秘伝集 家相秘録 合璧事類 河図洛書示蒙鈔 仮名世説 漢事始 神明憑談 元三大師百籤 元三大師御鬮 判断 閑散余録 漢書 観相奇術 広東通志 韓非子
き
の部奇術秘法 鬼神新論 鬼神論 奇説集艸 奇説著聞集 木曾路名所図会 吉凶開示 亀卜秘伝 救急摘方 救荒事宜 嬉遊笑覧 九星 方位早操便覧 牛馬問 窮理隠語 強識略 今古未発日時九星弁 近思録 近世奇跡考 近代世事談 禁中日中行事 錦嚢 智術全書 禁秘抄
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の部孝経 考証千典 皇朝事苑 黄帝陰符経 黄帝宅経 弘法大師一代記 古易察病伝 古易八卦考 吾園随筆 後漢書 五行大義 国語 国史略 国朝佳節録 極楽物語 古語拾遺 古今考 古今事類全書 古今神学類聚抄 五魂説 古今著聞集 古今八卦拾穂抄 古今妖魅考 古今類書纂要 五雑俎 古事記 古始太元図説 古事談 五趣生死輪弁義 滑稽雑談 諺草 護法新論 艮斎文略 今昔物語 昆陽漫録
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の部西国事物紀原 再生記聞 瑣語 三界一心記 〔三賢一致書〕 三元八卦九星方位占独判断 三国仏教略史 三国仏法伝通縁起 三才図会 三災録 三代実録 山堂肆考 算法闕疑抄 三余清事
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の部塩尻 塩原繁昌記 史記 詩経 事言要玄集 地獄実有説 自娯集 事纂 子史精華事類統編 資治通鑑 地震考 七十五法名目 視聴雑録 十訓抄 実験須弥界説 支那教学史略 島田幸安幽界物語 沙石集 拾芥抄 周書 十八史略 宗門略列祖伝 周遊奇談 宿曜経 朱子語類 修善寺温泉名所記 出定後語 出定笑語 主夜神修法 周礼 荀子 春秋左伝 遵生八牋 春波楼筆記 商家秘録 消閑雑記 蕉窓漫筆 掌中和漢年代記集成 成唯識論 初学便蒙集 諸活幹枝大礎学 書経 続日本紀 続日本後紀 書言故事大全 諸国怪談空穂猿 諸国奇談西遊記 諸国奇談東遊記 諸国奇談漫遊記 諸国奇遊談 諸国古寺談 諸国新百物語 諸国里人談 諸子彙函 庶物類纂 神易選 人家必用〔小成〕 人国記 新古事談 神社啓蒙 神社考 神籤 五十占 神相全編〔正義〕 新続古事談 神代口訣 新著聞集 神童憑談 神皇正統記 神変仙術錦嚢 〔秘巻〕 神幽弁論
す
の部水経 隋書 水土解弁 墨色指南 墨色小筌 墨色伝 駿台雑話
せ
の部聖学自在 星経
語 正字通 精神啓微 西籍 [#ルビの「せいせき」は底本では「さいせき」]慨論 清明通変占秘伝 清明 秘伝速占 性理字義 性理大全 世事百談 世説 摂西 奇遊談 説郛 善庵随筆 山海経 戦国策 洗心洞剳記 仙台案内 先哲叢談 先哲像伝

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の部葬経 宋元通鑑 宋高僧伝 荘子 相州大山記 宋書 相庭高下伝 宋稗類抄 草木子 続高僧伝 続古事談 続文献通考 祖志 息軒遺稿 素問 徂徠集
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の部大学 太極図説 〔大乗〕起信論 大聖日蓮深秘伝 大道本義 大日本史 大日本人名辞書 太平記 太平御覧 太平広記 高島易占 高島易断 太上 感応篇 霊能真柱 譚海 耽奇 漫録
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の部竹窓随筆 中古叢書 中庸 長寿食事戒 朝鮮征伐記 珍奇物語
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の部通変亀鑑
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の部東海道名所図会 淘宮学 軌範 淘宮学秘書 唐詩選 唐宋八大家 動物電気論 東方朔秘伝置文 東洋心理初歩 兎園小説 読書録
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の部二十八宿一覧表 日用晴雨管窺 日用早覧 二程全書 日本往生全伝 日本居家秘用 日本歳時記 〔日本〕社会事彙 日本書紀 日本仏法史 日本風土記 二礼童覧 人相指南 人相千百年眼 人相早学
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の部農家調宝記 農政全書 信友随筆
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の部梅園叢書 梅花心易掌中指南 売買極秘 馬関土産 博異記 博物筌 博聞叢談 博覧古言 八門九星 初学入門 八門遁甲或問鈔 八卦辻占独判断 八宅 明鏡弁解 初夢歌合 万金産業袋 万物怪異弁断〔怪異弁断〕 万物故事要略 万宝大雑書 万宝全書 万宝鄙事記 万暦 大雑書三世相大全
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の部秘事思案袋 秘事百撰 秘伝世宝袋 一宵話 百物語評判 〔古今百物語評判〕 百法問答抄
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の部風雨賦国字弁 巫学談弊 袋草紙 不思議弁妄 扶桑 見聞私記 扶桑略記 物学秘伝 仏国暦象編 仏祖統紀 物理訓蒙 物理小識 物類相感志 筆のすさび 文海披沙 文会筆録 文献通考
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の部まじなひ三百ヶ条 魔術と催眠術 魔睡術
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の部水鏡 道の幸 妙術博物筌 妙薬妙術集 民家必用永代大雑書三世相 民家分量記
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の部夢渓筆談 無量寿経
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の部明治震災輯録 名物六帖
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の部礼記 雷震記 羅山文集
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の部類聚国史 類聚名物考
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の部霊獣雑記 暦講釈 暦日諺解 暦日講釈 列子 列仙伝 簾中抄
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の部和漢三才図会 和漢珍書考 和漢年代記集成 和漢名数 和漢洋開化年代記 和漢暦原考 和訓栞 和名類聚抄
その他、雑誌、新聞ならびに西洋書籍の目次はこれを略す。
その書目中、極めて通俗卑近のものまでを掲ぐるは、妖怪の問題は通俗の間に存するもの多きによる。
それ、余がこのことに
哲学は余が専門とするところなれば、年来多少これを研究したるも、理学、医学に至りては、余の全く知らざるところなり。しかれども、この部分を欠きて妖怪学を完結することあたわざれば、ここにその二科を加うるに至りたるも、その説明のごときは、余の憶測をもって論断を下したるものすくなしとせず。これまた、専門の諸士の批正を請わざるを得ず。しかして、哲学に属する部分も、その学とも〔に〕既設の学科にあらずして未設の学科なれば、余の独断憶想にかかるものまた多し。もしその誤解に至りては、他日再考のうえ訂正を加うることあるべし。余自ら知る、この事業は一人一代の力よく成功を期すべからざるを。けだし、その大成のごときは、数世の後をまたざるべからず。ゆえに余は、ただその苗種を学田中に培養するのみ。
妖怪の事業は多く東洋に伝わるものを収集し、西洋に存するものはわずかに参考として掲ぐるに過ぎざるは、その研究の目的、わが国の妖怪を説明するにあればなり。しかしてわが国の妖怪は多くシナより入りきたり、真に日本固有と称すべきものははなはだ少なし。余の想定するところによるに、わが国今日に伝わる妖怪種類中、七分はシナ伝来、二分はインド伝来、一分は日本固有なるもののごとし。ゆえに、わが国およびシナの書類は、微力の及ぶ限りひろく捜索したるも、西洋の書類は、わずかに数十部を参見せしに過ぎず。
およそ妖怪の研究は卑賤の事業に似たるも、その関係するところ実に広く、その影響するところ実に大なれば、その説明のごときは、教育家、宗教家に必要なるは論なく、医師、文人、詩客、画工、俳優、史家、警官、兵士、政治家、法律家に至るまで、参考を要することは明らかなり。また、民間にありては、農工商のごとき実業に従事するもの、および婦人、女子に至るまで、みなことごとくその理を知るを要するは、余が弁をまたざるなり。ゆえに講義の目的は、広く通俗をして了解せしむるを主とし、例証はなるべく実際に適切なるものを選び、文章はなるべく簡易明瞭を本旨とし、他書引用のごときは、その書名、巻数、もしくは編名、丁数を掲げて、その捜索に便にす。読者請う、これを了せよ。
余、先年この研究に着手せし以来、文科大学の速成を教授せんと欲して哲学館を創立し、また国学科、漢学科、仏学科の専門部を開設せんと欲して全国周遊の途に上れり。ゆえをもって、余の研究も一時中止せざるを得ざるに至れり。しかれども地方巡回の際、実地見聞したるものすくなからざれば、研究の一助となりしことは疑いをいれず。その巡回の場所は、このことに関係するところあれば、左に掲記すべし。
巡回中滞在せし場所は、一道、一府、四十八国、二百十五カ所(もしこれにその際通行の国数を加うれば六十二国となる)。
伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川)遠江 国(掛川、浜松、平田、中泉) 駿河 国(静岡、小川、清水、藤枝) 相模 国(大磯) 武蔵国(忍) 上総 国(千葉、茂原) 近江 国(大津、豊蒲、五ヶ荘、愛知川、八幡、彦根、長浜) 美濃国(岐阜) 上野 国(安中、松井田、里見、高崎、八幡) 岩代 国(福島) 陸前国(築館、一迫) 陸中国(盛岡、花巻) 陸奥 国(弘前、黒石、板屋野木、鰺ヶ沢、木造、五所川原、青森、野辺地) 羽前 国(米沢、山形、寒河江、天童、楯岡、新庄、鶴岡) 羽後 国(酒田、松嶺、湯沢、十文字、横手、沼館、六郷、大曲、秋田、土崎、五十目、能代、鷹巣、大館、扇田) 越後国(新井、高田、直江津、岡田、安塚、坂井、代石、梶、新潟、沼垂、葛塚、新発田、亀田、新津、田上、加茂、白根、三条、見附、浦村、片貝、千手、六日町、塩沢、小出、小千谷、長岡、大面、寺泊、地蔵堂、新町、加納、野田、柏崎) 丹波国(亀岡、福知山) 丹後国(舞鶴、宮津、峰山) 但馬 国(出石、豊岡) 因幡 国(鳥取) 伯耆国(長瀬、倉吉、米子) 出雲国(松江、平田、今市、杵築) 石見 国(波根、太田、大森、大国、宅野、大河内、温泉津、郷田、浜田、益田、津和野) 播磨 国(龍野) 備前 国(閑谷) 備後 国(尾道) 安芸国(広島、呉) 周防 国(山口、西岐波、宮市、徳山、花岡、下松、室積、岩国) 長門 国(馬関、豊浦、田辺、吉田、王喜、生田、舟木、厚東、萩、秋吉、太田、正明市、黄波戸、人丸峠、川尻、川棚) 紀伊国(高野山、和歌山) 淡路国(市村、須本、志筑) 阿波国(徳島、川島、脇町、池田、撫養) 讃岐 国(丸亀、高松、長尾) 伊予国(松山、宇和島、今治) 土佐国(高知、国分寺、安芸、田野、山田、須崎) 筑前国(福岡、若松) 筑後国(久留米、吉井) 豊前 国(小倉、中津、椎田) 豊後 国(日田) 肥前 国(長崎、佐賀) 肥後 国(熊本) 渡島 国(函館、森) 後志 国(江差、寿都、歌棄、磯谷、岩内、余市、古平、美国、小樽、手宮) 石狩国(札幌、岩見沢) 天塩 国(増毛) 胆振 国(室蘭)
これよりこの「緒言」を結ぶに当たり、余の素志、宿望を述べて、天下の諸士に告げんとす。吾人は身心の二根によりて天地の間に樹立する以上は、真理を愛し国家を護するの二大義務を有するものなり。これを内に顧みては、心天雲深きところ真理の明月を開ききたりて、これを愛しこれを楽しむは学者の本分なり。これを外に望みては、世海波高きところ国家の砲台を築ききたりて、これを護しこれを防ぐは国民の義務なり。余は一人にして、この二大目的を達せんとす。ゆえに余、つねに曰く、「権勢の道に奔走して栄利を争う念なく、毀誉の間に出没して功名をむさぼる情なく、ただ終身、伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川)
それ、余は理想の実在を信ずるものなり。これを物界の上に考うれば、天地万有ことごとく理想の結晶、凝塊なるを信じ、これを人界の上に考うれば、皇室国体はまたみな理想の精彩光華なるを信ずるものなり。ゆえをもって、世界の上にありては、万有の美妙と心性の霊妙と相和して、天地六合ことごとく
さらに一言を宗教、教育の上に加えて、この一論を結ばんとす。余おもえらく、今日の宗教家も教育家もともに、迷雲妄霧の中に
〔原本(三版)には、このつぎに「妖怪学講義緒言に題す」という一文(明治二十六年八月十日付)が掲げられているが、すでに同文が本書十三頁八行目より十四頁二行目に掲載されているので、当該文は割愛した〕
前に掲げたる書目の外に参考せし書類、およびその後に参考書として購入したる書類を集めて、左にその〔書〕目を示す。〔原本はいろは順の旧仮名遣いで配列されているが、五十音順に直した。〕
い
の部威儀略述 夷堅志 頤生輯要 一言 雑筆 因果物語
う
の部雲臥紀談 雲室随筆 雲楽見聞書記
え
の部英華故事 煙霞綺談 役君形生記 燕石雑志 燕南記譚
お
の部往生要集 往生要集指麾鈔 思出草紙 温故要略
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の部怪妖故事談 垣根草 学山録 鶴林玉露 嘉多比沙志 〔傍廂〕 学海余滴 伽藍雑記 閑際筆記 韓詩外伝 閑聖漫録 勧善懲悪集 閑窓倭筆 感応編
き
の部擬山海経 鬼神集説 鬼神俚諺鈔 義楚六帖 橘庵 漫筆 祈祷感応録 奇病便覧 笈埃 随筆 教苑摘要 玉石雑誌 居行子 近世百物語
く
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の部慈恩伝 支干考 思斎漫録 地震海嘯考 七帖見聞〔天台名目類聚鈔〕 信田白狐伝 事物紀原 持宝通覧 釈氏蒙求 釈氏要覧 釈門自鏡録 拾遺往生伝 拾遺記 拾遺三宝感応伝 宗鏡録 十七史蒙求 修身雑話 修験 故事便覧 修験三十三通記 修験道伝記 修験道便蒙 述異記 須弥山略説 修要秘決集 春秋累筆 消閑雑記 笑戯自知録 想山著聞集 小窓間語 松亭漫筆 聖鬮賛 諸国怪談実記 諸国故事談 除睡抄 塵荊博問鈔 新語園 人国記 新沙石集 心性罪福因縁集 神道名目類聚鈔 人物故事 神仏冥応論
す
の部随意録 瑞応塵露集 瑞兎奇談 蒭蕘集
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の部西域記 西京雑記 晴明 物語 積翠 閑話 施食 通覧 世説故事苑 禅苑蒙求 僊術狗張子
そ
の部僧史略 捜神記 草茅危言 叢林集 続毘陽漫録 俗説弁 続蒙求 祖庭事苑
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の部大黒天霊験記 大蔵法数 大蔵輔国集 太平楽皇国性質 太上感応篇持験記 玉櫛笥 談鋒資鋭
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の部通俗五雑俎 通俗和漢雑話
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の部唐才子伝 当世両面鏡 桃洞遺筆 唐土訓蒙図彙 童蒙故事談 東遊雑記 它山石
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の部南海寄帰伝 南嶺子
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の部梅窓筆記 博物志 万金産業袋
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の部風俗通 福田殖種纂要 武家故事要言 扶桑隠逸伝 扶桑怪談弁述鈔 扶桑故事要略 扶桑蒙求 峰中根源記 仏牙舎利縁起 仏国暦象弁妄 仏舎利験伝 仏神感応録 仏祖通載 仏法蔵 分類故事要略
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の部万年草
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の部無鬼論弁
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の部名家略伝 明和神異記
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の部夜窓鬼談 夜談随筆 破柳骨 大和三教論
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の部梨窓随筆 律相感通伝 隆興仏教編年通論 竜舒浄土文 両部神道口訣鈔 霖宵茗談
れ
の部霊魂問答
ろ
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の部和漢合壁〔夜話〕 和漢雑笈或問 〔和漢珍書考〕 或問止啼銭 〔法界或問止啼銭〕