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手紙

文久三年三月二十日 坂本乙女あて

坂本龍馬




扨も/\人間の一世(ひとよ)がてん(合点)の行ぬハ元よりの事、うん(運)のわるいものハふろ(風呂)よりいでんとして、きんたま(睾丸)をつめわりて死ぬるものもあり。(それ)とくらべてハ私などハ、うん(運)がつよくなにほど死ぬる(場)へでゝも(死)なれず、じぶん(自分)でしのふと思ふても又いきねバならん事ニなり、今にてハ日本第一の人物勝(麟)太郎殿という人にでし(弟子)になり、日々兼而(かねて)思付所をせい(精)といたしおり申候。其故に私年四十歳になるころまでハ、うちにハかへらんよふニいたし申つもりにて、あにさんにもそふだん(相談)いたし候所、このごろハおゝきに御きげんよろしくなり、そのおゆるしがいで申候。国のため天下のためちから(を)つくしおり申候。どふぞおんよろこびねがいあげ、かしこ。

三月廿日

乙様

御つきあいの人ニも、

(ごく)御心安き人ニハ

※(二の字点、1-2-22)御見せ、かしこ。






底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社

   2003(平成15)年12月10日第1刷発行

   2008(平成20)年9月19日第7刷発行

※底本手紙写真のキャプションに、(京都国立博物館蔵)とあります。

※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。

※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。

入力:Yanajin33

校正:Hanren

2010年7月24日作成

2011年6月17日修正

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