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手紙

慶応元年閏五月五日 渋谷彦介あて

坂本龍馬




○坂本龍馬ヨリ渋谷彦助へ−将軍上洛ノ件(包紙ウワ書)

「薩州御藩

渋谷彦助様
坂本龍馬

足下

 二白、本文ニ土方(ひぢかた)楠左(楠左衛門久元)ハ国本(土佐)より出候ものゝ内ニハ一寄咄合(はなしあひ)て遣候ものニて候よし、時情も存候ものなり。以後御引合在之候時ハ必此者がよろしく候、かしこ。

其後益御安泰奉大賀候。然バ此度土方楠左衛門上国より下り候。此者の咄、将軍家かつて伝聞の通り既ニ発足。東海道通行軍旅候て、人数五万と申事のよし、一件に付岩下左兄(方平みちひら)早々蒸気船を以て御国許ニ帰られ、今月十日頃ニハ西吉兄(西郷吉之助)及

小大夫(小松帯刀たてわき

など御同伴のよし承り候、それニ付てハ私よりハ書状ハ御国ヘハ出し不申、兎も角も御老の上雅兄よろしく

土方楠左より長(州)及時勢被聞取の上(く)

ハ敷

御国ニ御伝ヘ可下候、先ハ早々謹白候。

末五月五日
龍馬

渋彦大人

足下

追々

 来五月六日桂小五郎(木戸孝允)山口より参り面会仕候所、惣方長州の論とハかわり余程大丈夫ニてたのもしく存候。当時小五郎ハ大ニ用られ国論なとも取定候事書出候よしニて、ともに/\よろこび候事ニ御座候、かしこ






底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社

   2003(平成15)年12月10日第1刷発行

   2008(平成20)年9月19日第7刷発行

※底本手紙の写真のキャプションに、(個人蔵、鹿児島県歴史資料センター黎明館寄託)とあります。

※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。

※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。

入力:Yanajin33

校正:Hanren

2010年7月24日作成

2011年6月17日修正

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