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手紙

慶応元年九月か 坂本乙女あて

坂本龍馬




私がいぜん(以前)もつていました、かくなじ(角な字)でかいた(ママ)女伝を、あれをひらがなになほして(絵)入にて、そのゑと申は、本の烈女伝のゑのとふりなり。

誠におもしろし。私がかな(仮名)なを(直)そふと兼ねてをもいしが、(それ)を見てやめてしもふたり。夫を(おまへさんになり)おくにへおくりたさにたづね候。けして今時の本やにはなきもの也。故にある女にたのみてかきうつさせより申候。其女と申はげにもめづらしき人、名は御聞しりの人なり。

どうぞ/\たのしみたまへ。その本のうつしたるれいとして、私しがうちでならひよりた、いしずり(石刷)のかくなじのおりでほん(折手本) (これはお前さんにあげておまへさんもならいよりた本なり。)夫を御こしなされ度、兄さんまでひきやく(飛脚)に御おくりなされ度候。またまた色※(二の字点、1-2-22)のものさし上候へども、夫はおい/\(追々)なり。此龍がおにおふさま(御仁王様)の御身をかしこみたふとむ所よくよくに思たまへ。

乙大姉 をにおふさま
龍馬

皆火中なり。此よふな文、なきあとにのこるははぢなり。






底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社

   2003(平成15)年12月10日第1刷発行

   2008(平成20)年9月19日第7刷発行

※底本本文の末尾に、(「関係文書第一」、坂本直衛旧蔵)とあります。

※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。

入力:Yanajin33

校正:Hanren

2010年7月24日作成

2011年6月17日修正

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