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手紙

慶応三年一月二十日 姪春猪あて

坂本龍馬




春猪どの/\、

春猪どのよ/\。此頃ハあかみちやとおしろいにて、はけぬりこてぬり/\つぶしもし、つまづいたら、よこまちのくハしやのばゞあがついでかけ、こんぺいとふ(金平糖)いがた(鋳型)に一日のあいだ御そふだんもふ(申)そふというくらいのことかへ。

をばてきのやんかんそふもこのごろハ、ちとふやり/\と心も定めかねをりハすまいかと思ふぞや。たいての※(コト、1-2-24)(こと)なり候や、二町目へすてしめてもよかろふのふ。

おまへハ人から一歩もたして、をとこという男ハ皆にげだすによりて、きづかひもなし。又やつくと心もずいぶんたまかなれバ、何もきづかいハせぬ。

けれども、是からさきのしんふわい(心配)/\ちりとり(塵取)ににてもかきのけられず、かま(鎌)でもくわ(鍬)でもはらハれず、(ず)いぶん/\せいだしてながいをとし(御年)をく(送)りなよ。

私ももしも死ななんだらりや、四五年のうちにハかへるかも、露の命ハはかられず。

※(二の字点、1-2-22)御ぶじで、をくらしよ。

正月廿日夜

りよふより

春猪様

足下






底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社

   2003(平成15)年12月10日第1刷発行

   2008(平成20)年9月19日第7刷発行

※底本手紙の写真のキャプションに、(東京 松野尾章氏蔵)とあります。

※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。

※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。

入力:Yanajin33

校正:Hanren

2010年8月26日作成

2011年6月17日修正

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