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手紙

慶応三年四月初旬 坂本乙女あて

坂本龍馬




扨も/\、御ものがたりの(おか)しさハ、じつにはら(腹)おつかみたり。秋の日よりのたとへ、もつともおもしろし笑しと拝し申候。私事かの浮木ウキキの亀と申ハ何やらはなのさきにまいさがりて、のかげお見る事ができぬげな。此頃、みよふ(妙)な岩に行かなぐり上りしが、ふと四方を見渡たして思ふニ、※(二の字点、1-2-22)(さてさて)世の中と云ものハかきがら(牡蠣殼)計である。人間と云ものハ世の中のかきがらの中ニすんでおるものであるわい、おかし/\。めで度かしこ。

龍馬

乙姉様 御本

猶おばあさん、おなんさん、おとしさんの御哥ありがたく拝し申候、かしこ

猶去年七千八百両でヒイ/\とこまりおりたれバ、薩州小松帯刀申人が出しくれ、神も仏もあるものニて御座候

先日中、私の手(もと)つがふあしく一万五百両というものハなけれバならぬと心おつかいしニ、(はからず)後(ママ)藤庄次郎と申人が出し出し(ママ)くれ候。此人ハ同志の中でもおもしろき人ニて候。かしこ






底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社

   2003(平成15)年12月10日第1刷発行

   2008(平成20)年9月19日第7刷発行

※底本手紙の写真のキャプションに、(京都国立博物館蔵)とあります。

※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。

※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。

入力:Yanajin33

校正:Hanren

2010年8月26日作成

2011年6月17日修正

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