ハワイのヒロはホノルルに次ぐ都会であるが、そのヒロに某と云う商店があって、
賃銀の関係から
支那人や日本人を事務員に使っていた。
某時その事務員の一人であった支那人がしくじったので、すぐ解雇してその
後へ新らしく事務員を入れたところで、数日してその事務員は来なくなった。商店の方では事務にさしつかえるのでまた別の事務員を入れたが、その事務員も数日すると来なくなった。商店の方ではなんと云う事務員の落ちつかない机だろうと云ってまた別の事務員を入れたが、それも数日すると来なくなり、その
後も一人二人入れてみたがそれもすぐ来なくなった。そこで店主が不審して来なくなった事務員について詮議してみると、解雇せられた支那人のいた机で事務を
執っていて、その机の
抽斗を
啓けると傍へ人が来て立つような気がして、事務を執っていられないので来なくなると云うことが判った。
これは「電球にからまる怪異」の話とともに、大正三年
比ハワイに住っていた田島金次郎
翁の
土産話である。