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暮春詠嘆調

萩原朔太郎




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年ひさしくなりぬれば

すべてのことを忘れはてたり

むざんなる哉

かばかりのもよほしにさへ

涙も今はみなもとをば忘れたり


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人目を忍びて何處いづこに行かん

感ずれば我が身も老いたり

さんさんと柳の葉は落ち來る

駒下駄の鼻緒の上に落日は白くつめたし






底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年6月25日作成

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