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三人目の患者

萩原朔太郎




三人目の患者は、

いかにもつかれきつた風をして、

べろりと舌をたらした、

お醫者が小鼻をとんがらして、

『氣分はどうです』

『よろしい』

『食物は』

『おいしい』

『それから······

『それからすべてよろしい』

そして患者は椅子からとびあがつた、

みろ、歪んだ脊髓のへんから、

ひものやうにぶらさがつた、

なめくじの神經だの、くさつたくらげの手くびだの······

そいつは眞赤まつか殺人者ひとごろしだ。





底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房

   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行

   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行

入力:kompass

校正:小林繁雄

2011年6月25日作成

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