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首里城

世禮國男




清ら若水にみそぎ美々しくそでひきつらね

首里天加那志しゆいてんがなし美御機みうんち拝むと人々は

開暁鐘けぢよがねとつれて石畳九重の城に登つたで(あ)らう

歌と蛇(ママ)皮線に城内の夜は明けはなれ

御祝ういゑごと続く御代の福らしや

都大路にあけず羽美衣んすも晴れやかに飛び交ひ

冠船踊くわんせんおどりの華々しさよ

浮上うちやがとて見ゆるとり伊平屋いへや嶽の如くに

玉黄金若人たちは

みやらびたちの前に踊りえたであらう

花の昔よ走川はいかはのごとに

(流)れゆく年波を漕ぎ戻すよすがもなく

唐破風の屋根は苔蒸し 風にいたみ

竜樋の泉には清ら白鳥もおり立たず

茨に古ぶ階段きざはしとほく石塊ふみあぐみ

城壁高く望楼に登り立てば

天美子あまみこ御神みかみ天降あまくだり作り召したる島々や

新装こらした緑の真帆はりはい並び

おす風とつれて朝の港を帆走はいいづるよ。






底本:「沖縄文学選 日本文学のエッジからの問い」勉誠出版

   2003(平成15)年5月1日初版発行

底本の親本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

初出:「日本詩人 第三巻第三号」

   1923(大正12)年3月

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年1月17日作成

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