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〔花園から月かげが〕

櫻間中庸




花園から月かげが

帷をほのかな紫にけぶらせて

マダムの室を訪れるとき


絢爛な裝釘を衣た私の詩集は

その腕の中で

指輪の役をするだらう


詩集から私は生れ出る

花園を月影にくたくたにぬれながらタキシードの詩人は

マダムの幻想にそつと近づく


詩集は私が生んだもの

私は詩集から生れる






底本:「日光浴室 櫻間中庸遺稿集」ボン書店

   1936(昭和11)年7月28日発行

※〔〕付きの表題は、作品の冒頭をとって、ファイル作成時に加えたものです。底本では、表題の位置に「○」が記載されています。

入力:Y.S.

校正:富田倫生

2011年9月27日作成

青空文庫作成ファイル:

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