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櫻間中庸




 美しい夢を見た。

 清流にかゝつた白い橋の上に私は妹たちと居た。さゞれ石の上をチロチロと流れて行く碧玉の水。私は嵐山かどこかの繪葉書を想つてゐた。

 美しい夢であつた。山路にかゝつてゐた妹たちと兄と私。藤の房があつた。スヰートピーの花のやうな群がりであつた。私は妹のためにその房を、こぼれる花を氣にしながら折つた。

 私は健康である。

 郷里に歸る日の近いせいであらう。かうした夢は兄や妹をめぐるこの嬉しさ。






底本:「日光浴室 櫻間中庸遺稿集」ボン書店

   1936(昭和11)年7月28日発行

入力:Y.S.

校正:富田倫生

2011年9月27日作成

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