疲弊した魂からしぼりだす最後の勇気のような
いま夕暮れの空に反響を呼んで
響きわたる喇叭!
おお汗みずくの兵士、
夏の夕暮の
湿やかな大気に充ちた郊外の別荘地にいま歩み入ってくる一隊、
重い背嚢、
きらめく銃剣||埃まみれの靴、
一日の演習に疲れて
へとへとになって帰ってくる是等の人々、
空腹||眩暈 、
いま靴の音も不揃いに
ふりあげる喊声······
水撒かれた小径、
うちつづく生籬 、
ああその中を
彼等の一隊は過ぎてゆく、
いま遠くなる喇叭、
靴の音、
労苦と疲弊の一日の終り、
ああ落日の空の下の
一きわ高い彼等の歌!
(一九一八年十月大鐙閣刊『ぬかるみの街道』に発表 一九二〇年十月新潮社刊『百田宗治詩集』を底本)