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たんぽぽとおれの感傷

陀田勘助




春の訪れをまっ先に知らせてくれた

黄色に輝くたんぽぽの花よ、

いま恍惚と夢見るように

まっしろな球形の頭を微風になびかして

音もなくふっわりと羽蟻のごとく飛びゆく数々の種子は

青空の彼方へ

飛び行く種子よ!

周囲に呻吟するおれの希望を、思想を

雁のごとく伝波せよ

そして来たるべき春に

雨・風・嵐に打ち勝って

工場の屋根に、野原に、ビルディングの窓に

鮮やかな黄色な花を開け!

(獄中から鶴巻盛一宛書簡一九三〇年五月十四日付 『陀田勘助詩集』を底本)






底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社

   1987(昭和62)年5月25日初版

底本の親本:「陀田勘助詩集」国文社

   1963(昭和38)年8月

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年12月12日作成

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