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プチロフ工場

今村恒夫




プチロフ工場の兄弟と

蹶起けっきした罷工の勇壮を讃えよ。

伝統と鉄鎖を打ちくだ

狂気したツアーの暴逆の中に

反逆の矢を射たのは彼等だ。

巨大なる世界の基礎を置き

不滅なる労働の旗の下に殉死したのも彼等だ。

彼等は全世界の曙光で有り宇宙廓清の最初の猛火だ。

彼等ではないか銃火と剣に突き刺され乍ら防砦を築いたのは。

身を持って戦術を教えたのは。

彼等は最後の敗戦で有り全世界最初の勝利だ。

彼等が銃弾の前に斃れた時

宇宙空前の太陽は孕まれていたではないか。

十月の紫の日の勝鬨かちどきは敗惨の中にきざしていたではないか。

(『文芸戦線』一九二九年十一月臨時増刊号に今村桓夫名で発表)






底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社

   1987(昭和62)年6月30日初版

底本の親本:「文芸戦線」

   1929(昭和4)年11月臨時増刊号

初出:「文芸戦線」

   1929(昭和4)年11月臨時増刊号

※初出時の署名は「今村桓夫」です。

入力:坂本真一

校正:雪森

2014年5月14日作成

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