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死の凱旋兵

国見善弘




砲煙弾雨の中に

    常に描いて居た

懐かしい故郷の

    停車場だった


白布に包まれた

    木箱の中で

無言の英雄は

    故郷に抱かれた

      喜こびに

打ちふるえて

    居るだろう


軽々と けれど

    つつましく

木箱を捧げた

    戦友は

微かな砲煙の臭を

    感じながら

高まって来る

    感情を

こらえて居た


弔旗がしずかに

    垂れて

水を打った様な

    出迎えの中を

今 悲しい死の

    凱旋兵は

      行く

一九三七年、善弘が従兄にあてた手紙より

(一九七九年二月槇村浩の会刊『土佐プロレタリア詩集』を底本)






底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社

   1987(昭和62)年6月30日初版

底本の親本:「土佐プロレタリア詩集」槇村浩の会

   1979(昭和54)年2月

入力:坂本真一

校正:フクポー

2018年5月27日作成

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