落葉よ、落葉よ、
秋風に吹かれて、
お前がカラカラと鳴り乍ら
井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、
舞いこんでくると、
おお、私は胸ふたがれる!
何一つもたらすことなく、
過ぎ去った日の一日一日を
ただ、えいえいと
つづれつくろい、米かしぎ
凡ての
かなしみさえもおき去りにして
生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、
ああ、お前は散ってゆく、
秋風になぶられて、舞い乍ら······
空は、
こんなに青く、深く、
豊かにみのっている穂波もあろうに。
落葉よ、
お前のそのカラカラと鳴る音は
どんなに、私の胸をたたき、
あわれを||、
はきよせられ、すて去られるものの上にはせさせるか!
ああ、ひょうひょうと舞い乍ら、
むなしく散りゆく落葉よ!
けれども、
お前のそのつもりつもった
やがて、来る春にそなえるように、
私たちの、このいためられた生活が
失ったものが、
地上にみちあふれ、天地を包むとき、
そこに、
新らしい世界が······
おお落葉よ、落葉よ、
私らのもみくちゃな生よ、
苦悩のカラよ
秋風にたたかれて、激しく、
散れよ、散れ!
(『詩精神』一九三五年十一・十二月合併号に発表 一九三六年一月前奏社刊『一九三五年詩集』を底本)