吹きっさらしの田圃 には
もう、村の誰 も出ていない
だのに、私の家では麦蒔きがすまない
取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されて
あとに残った女手二つ
私とおっ母とであくせくと麦蒔き
毎日、朝早くから晩おそくまで
かたい刈株をうちかえし、うねをつくり
せっせと蒔きつけを急ぐ私達||
かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば
地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくる
おお兄ちゃんが満州へ引ったてられて行ってから
急に、めっきりやつれたおっ母
老いさらぼけたそのやせ腕に
ふり上げる一鍬一鍬!
私の胸は戦争への憎しみを深める
勝っても、負けても、戦争が私達に楽な生活 をよこしはすまいに
働き盛りの貧農の息子を奪って
み国の為にと殺し合せるなんて·········
あああの寒い満州でたたかう兄ちゃん!
兄ちゃんの身は無事かしら
私はおっ母をいたわりはげまし
兄ちゃんのかわりにせっせと働くけれども||
戦争への憎悪で、全身はわななく。
(『プロレタリア詩』一九三一年十二月号に発表)