ほんの僅かな時でよい
生活のわずらいから脱れ
静な時をもつ事は||
おお 何と云う仕合せだろう
昨日 私は 書斎で
たった一人ッきりの私の世界で
海を越えた遠い国の 心の友の著書を読み
今日も亦 別の友のを読んだが
私は私のこころにふれ
私の一番懐しい私を
彼処に
そして 一人はもう此の世を去った過ぎし日に
時と処とを越えて見出した
ああ その歓び その深い歓び
永遠の自分を感じた霊の潤い
これこそ まことの私の幸福
それにしてもそれにしても
その僅な時をすら与えられないとは
友よ 取ろうではないか
この最もハンブルな 無形な幸福を||いやその幸福を 邪魔する間垣を破ろうではないか
永遠の人類のために||さあ
そのために此の身を捨てても進もうではないか
我等のつとめを果すために
(発表誌不詳 『社会派アンソロジー集成』別巻を底本)