眠れ やはらかに青む化粧鏡のまへで
もはやおまへのために鼓動する音はなく
あの帽子の尖塔もしぼみ
煌めく七色の床は消えた
哀しく魂の溶けてゆくなかでは
とび歩く軽い足どりも
不意に身をひるがへすこともあるまい
にじんだ頬紅のほとりから血のいろが失せて
疲れのやうに羞んだまま
おまへは何も語らない
あるるかんよ
空しい喝采を想ひださぬがいい
いつまでも耳や肩にのこるものが
あつただらうか
眠るがいい
やはらかに青む化粧鏡のなかに
死んだおまへの姿を
誰かがぢつと見てゐるだらう
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