空にとどいてゐる
美しい樹々よ
花の咲かない············
花はなくとも
ああ せめてものわが願い
光りのハンモツクに
僕はつつましく腰をおろす
風が静かにひかるとき
ゆれないハンモツクで
僕はそつと時間をみ失ふ
ぽくぽくと駆けてくる
波頭よ
さうして
何も彼も洗ふがいい············
貝殻の中の小さな海にも
冷い空が
匂ふやうに光る
匂ひの向ふへ花がこぼれた
重たい風船のやうに暗い秋の陽が
落ちてしまつて············
ひと掬ひの歌もない
海よ
貨物船よりもぢつとして
お前を視てゐる僕
(〈13年〉十一月讃岐にて)