この傾斜では
お伽話はやめて
こはれたオペラグラスで
アラベスク風な雨をごらん
ひととき鳩が白い耳を洗ふと
シガーのやうに雲が降りて来て
ぼくの影を踏みつけてゐる
光のレエスのシヤボンの泡のやうに
静かに古い楽器はなり止む
そして
············隕石の描く半円形のあたりで
それはスパアクするカアブする
匂ひの向ふに花がこぼれる
優しい硝子罎の中では
ひねくれた愛情のやうに
ぼくがなくした時刻をかみしめる
ぼくはぼくの歌を忘れてゐる
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。