あゝ
終の夕は来りぬ、
天昏に
地昏にさはなる
不浄はもこゝに亡ぶか、
洗礼女||河原の
葦に
法涙の露無量光、
新らしき
生命の慈相
||十
夜法会の跡さびしき、
天台の寺院の堂に、
いからしく波うつ霧や、
仏龕の虫ばむ音は、
悲しとも、これも自然が
法の座へ辿る
足音ぞ、
きけ
葦のさなす小琴に、
霊のうた『血汐は白し
血は白し、こや
敬虔の
古瓶の封を破らず
時をまち考え
伏して
いまぞいま『自然』に
浸す、
白き血に
映れ
大天、
白き血を
吸へや
大地ありとある
孤独のものは
静寂の法に
帰依して
黙しつゝ白き血
飲め』と、
きくからに身も溶けごゝち。
見かへれば
喬木のしげみ
天台の寺院は
闇に
||うなだれて
物思ひ立てる
己が身も小河も葦も
大法の一切滅に
あゝなべて見えざる
光輝||
●表記について
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