なが
月下浣の日のゆふべ、
山下岩根垂る水の
玉のしづくに
核ぐみて、
かつ
熟みこぼし
斎ひつゝ、
風に
額づく
茴香の
あゝ
姉妹の二人もとよ。
化石もすらむ
秋の
木は
骨立ち
強に
呼吸つまり、
天つ
御法のおん
宣告に、
拗ねては、
櫨も葉こそ
縒れ、
孕婦ながら
茴香は
優婆夷か、
悩む
色もなし
伴にはぐれし
赤蟻の
飢ゑて
足悩ゆむ
湿り
地に、
憐み
顔のおとどひは
茎[#ルビの「くも」はママ]も
軟らに
額づきて、
手弱腕にそと乗せつ、
弘誓もさこそ、あゝ
茴香。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
- [#···]は、入力者による注を表す記号です。
- 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。