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かさぬ宿

末吉安持




青野あをのに行き暮れて、

山下街やましたまち片門かたかどに、

いかで一夜ひとよ宿やど乞ふと

みやこのなまり、||うらわかき

学生がくせいづれの七人しちにん

手にこそしたれ、百合の花。


家の下部しもべが、かゞみ、

しはがれごゑに、竹箒たけばうき

とる手とどめて物いへば、

二室ふたまへだてし簾障子すしやうじ

奥に乳母うばよぶ||こは人の

百合の花なる白き影。


親なき君をいつく

あなあやにくと、しとやかに

乳母はいなみぬ。よし、さらば、

そのあえかなる君祝ひ

捧ぐとあたへ行き過ぎぬ、

七人しちにんの手の百合の花。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

入力:坂本真一

校正:フクポー

2018年12月24日作成

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