凶会日は
凶会日と見て
病めるもの衰へしもの、
床の
上にすなほに
僵れ、
瓶の身は砕けてちりて、
滅亡に入らむ。
床の
上に
破れぬ、
花瓶、
されどそが『こゝろ』は如何に、
すなほにと云へど、やさしき、
砕けにはあらず、はげしく
叫ぶを聞きぬ。
人の子は
瓶にもあらず、
運命は
運命と
観て、
秋のくれ、死ぬるといふ
夜、
ほのかなる
燭の
火のかげに、
題目をこそ
||蝋燭はかすかに音し、
黄ばむ火は寒げに
揺れぬ。
刻々に
面がはりゆく
あゝ
死相||刹那よ黒く、
つくは
呻吟。
破瓶を
画師うち抱き、
死人を
法師みちびき、
秋の野へ、
葬りの
途に、
また聞きぬ、見ぬ、
黒牛の
これも
呻吟。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
- 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。